2008年12月27日

『遠まわりする雛』 米澤穂信

遠まわりする雛  遠まわりする雛

どうもお久しぶりのブログ更新です。
最近どうしてたかというと、風邪ひいて寝込んでました。
なんか去年も同じことあったような気が……
さすがに8度4分で残業2時間やった次の日は死にました。
だって人がおらんから、帰れない!って状況だったので。
そんなわけで寝て、寝て、寝まくって、
もう眠れないよ、いつのまにか風邪治ったよってことで、
ブログでも書いてます。ハイ。
風邪で病院行ったのは小学生の時以来。
インフルエンザじゃなくて、本当に良かった……

と古典部シリーズ第四弾。
今回はこれまでの物語の隙間を埋めるような短編集。
主人公奉太郎らの学園生活1年間を振り返りながらも、
新しい物語が散りばめられていて、
それぞれの人物の人間関係を確認と再発見。
そして一年を通じての変化が垣間見られた。

最後の話のタイトル名になる「遠まわりする雛」を読んだ後は、
これからの奉太郎ら、古典部の人間関係が変化する兆しが感じられた。
やらなくてもいいことなら、やらない。
やらなければいけないことは手短に。
の少エネ主義の奉太郎が、何をやるべきことにするのか。
何を大切に思うのかが、変化していきそうだった。
恋心か、憧れか、はたまた別のことになるのか。
える、里志、伊原ら他の古典部メンバーも何かしらの動きがありそう。
ミステリーも重要というか、もっとも核になるのだけど、
青春小説の要素も持ち合わせているだけに、
人間関係もこれから複雑で重要なウェイトを占めそうだ。
何はともあれ、これからも気になるシリーズになりそう。

関連作品感想リンク
『氷菓』
『愚者のエンドロール』
『クドリャフカの順番』
posted by kakasi at 00:37 | Comment(2) | TrackBack(0) | 読書 「米澤穂信」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月02日

『そして扉は閉ざされた』 岡嶋二人

そして扉が閉ざされた (講談社文庫) そして扉が閉ざされた

この本の前に読んだ本は乾くるみさんの『リピート』
そして今回読んだ『そして扉は閉ざされた』には奇妙な符合が。
時系列的に『リピート』が後の作品なので、乾さんが狙ったのか、偶然なのか。
この両本、主人公の名前が「毛利」であり、ヒロインの名前が「鮎美」と、
まったく同じだった。

奇妙な偶然にこういうこともあるのかと驚いた。
偶然に毛利と鮎美の話を二回続けて読んだことになる。
こんなことは、初めてだ。

そこは置いておいて、本編の方は、
完全な密室に閉じ込められた、男女四人の物語だった。
ある事件を通じて繋がる四人が、その事件を回想していくというもの。
そして犯人はこの中にいるのではと疑いながらも、
力をあわせて、密室からの脱出を試みていく。
というたったそれだけの話。
事件のことはひたすらに回想だけで、
実際の舞台は扉が閉ざされた密室のみに終始されている。
回想では事件があるが、現在進行形ではまったく何もないのだが、
とんでもなくスリリング。
推理が加速していく様は、読んでいてページをめくる手が止まらなくなる。
惹き付けられるってこういうことなんだと思い知らされた。
posted by kakasi at 00:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 作家別 「あ行」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月01日

『リピート』 乾くるみ

リピート (文春文庫)   リピート

久しぶりに読んだ本がこの『リピート』
タイトル通りの、いわゆる繰り返しの人生を扱ったもの。
その過去に還るという設定を選んで読んだというところに、
僕の弱い心であったり願望が垣間見られるが、
問題はそういうところでなく、面白いかどうかということ。
SFだけど、ミステリーの比率が強く、最後までドキドキさせられた。

このリピートの過去に戻るというのは、
記憶を持ったまま、十ヶ月前の自分に戻るというものだった。
作中でも何度も言葉を目にするが、グリムウッドの『リプレイ』の要素が強い。
そしてリプレイした十人が次々と死んでいくその不審さは、
『そして誰もいなくなった』まあ、これはあらすじくらいしか知らないが。
リプレイ要素は、今回の舞台を整えるためくらいなもので、
作品は完全なミステリーだと思う。
SF王道のタイムトラベルを期待して買った僕としては、
勘違いして感もあるが、そんなこと気にならないくらい、
このミステリーに引き込まれ、
次々と起こり来る運命、あるいは人為的なものに驚き、
過去に戻る人の心に困惑、そして共感をした。

人生は一度きりだから、人生なのであって、
繰り返されるならば、もはやそれはゲームのようなものだと思った。
繰り返すことも人生なのかもしれないが、
この物語では、そんなことを思った。

解説で、様々な過去に戻る、やり直すというパターンの作品が挙げられていた。
自分が見たことものあるだけでも、
『リプレイ』『君といた未来のために〜I'll be back』
『サマー/タイム/トラベラー』『バタフライ・エフェクト』
『時をかける少女』『七回死んだ男』
ちょっと毛色が違うがゲームのリセットという特性を生かした
『弟切草』『トルネコの大冒険』
などと、古今東西の作品を解説から振り返ると、
『リピート』は、そういった以前の繰り返し作品のように、
代表的な繰り返し作品と、とられないかもしれないが、
繰り返しの作品を統括したエンターティメント作品の傑作だと思う。

関連タイムトラベル作品感想リンク
『リプレイ』ケン・グリムウッド
「君といた未来のために〜I'll be back」
『サマー/タイム/トラベラー』 新城カズマ
『サマー/タイム/トラベラー2』 新城カズマ
「バタフライ・エフェクト」
「バタフライ・エフェクト2」
『スキップ』 北村薫
『ターン』 北村薫
『リセット』 北村薫
『七回死んだ男』 西澤保彦
posted by kakasi at 17:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 作家別 「あ行」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月30日

『坂口安吾 [ちくま日本文学009] (ちくま日本文学』 坂口安吾

坂口安吾 [ちくま日本文学009] (ちくま日本文学)坂口安吾 [ちくま日本文学009] (ちくま日本文学

最近のヘヴィロテがベルセバから、ニューオーダーに変わった。
へこんでた時は、ブルー・マンデーばかりリピートしていたが、
もう大丈夫。60マイルズ・アン・アワーでご機嫌。
僕は、イアン・カーティスのように23歳で人生を決めるつもりはない。
と思えば、クリスタルの和訳を見て、また沈んでしまう。
僕らはクリスタルのようなもの 簡単に砕けてしまう。

と、前置きに洋楽の話から、坂口安吾へと。
この本は、ゆっくり少しずつ読んでいたことと、
読み終えた後、人生最大級の不幸の津波が襲ってきたので、
あまり感想というものが、なかなか浮かんでこない。
ただ、暗かった、暗かったがエネルギーもあった。
このろくでもない世の中を生きてやるという気質を感じたのは、
この本に収録されている話が、エッセイのようなものが多かったからかもしれない。
詳しいことは、本当に覚えてない。
本も実家に持って帰ってしまったので、手元にない。

収録されているものは、ネットで調べられた。
まったく良い時代だ。

風博士/村のひと騒ぎ/FARCEに就て/石の思い/風と光と二十の私と
勉強記/日本文化私観/堕落論/続堕落論/白痴/金銭無情
湯の町エレジー/高千穂に冬雨ふれり/桜の森の満開の下

というラインナップ。

中でもインパクトに残るのは、風博士、白痴、湯の町エレジー、
そして桜の森の満開の下。

だけど、今になって心に残っているのは、
たぶん、日本文化私観だと記憶しているけど、
日本のモノであったり文化が無くなっても、かまわない。
真に必要なら日本の伝統的な建築物なども壊して、
駐車場などに変えてしまえばいいなどというものだった。
僕らの生活が、日本人の生活が健康ならそれで良いというもの。

形あるものは、必ず崩れる。伝統は風化していく。
そこに永遠なんてものなどありはしない。
なんともありふれたことだけど、気分が落ちていくとそこに到達する。
だから、自分の生活に真に必要なら、既存のものを破壊して、
新たに創造したものからでも美が生まれる。
美しく飾り作られたものからでなく、実質としてのものから美が生まれるという。

なるほど、一理あるが、納得しきれないものとこもある。
だって、僕は古い伝統美も好きだから。
それに安吾の言い方だと、機能美という話に当たると思うから。
僕は、空虚でもそれ以外の美を信じたい。
入らないものからも生まれるものもあると思う。
普段必要なくても、ふと見つめてみると美しいものもある。
無駄なものこそが美しくもあることもある。
結局は、美しいと感じ取れるかの心の問題だと思う。

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2008年11月20日

愚痴です スルーしてください

もう吐き出さないやってられん!
色んな人愚痴ってるけど、とにかくキツイ!

卑屈でどうしようもなくヘタレた文が読みたい。
こんなダメなやつがいるんだって知りたい人だけ続きをどうぞ。
続きを読む
posted by kakasi at 23:50 | Comment(4) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月09日

『99%の誘拐』 岡嶋二人

99%の誘拐 (講談社文庫)  99%の誘拐

さっそうと行われる誘拐劇。
けっこう厚めの本だけど、スピード感があり、
余分な部分を削り、その誘拐劇をかろやかに書いているので、
劇中の誘拐方法、そして身代金の受け渡しのように、
あっという間に、テンポ良くページがめくらされた。

ある誘拐事件から時代を経て、新たに同じような誘拐事件が起きる。
犯人には、強烈な悪意は感じ取れなかった、むしろ悲哀が感じられた。
しかし、誘拐とは卑劣なものだと思う。
だけど、僕が犯人と同じ立場だったら、責めきれない。
僕が傍観者としてなら、その誘拐に軽蔑をするだろう。
でも被害者側だとしたら、責めきれない。
誘拐された人物の心境を思えば、やっぱり許せないが。

そんな事件を書き上げているが、僕が好きなところは、
物語の1章を務める、最初の誘拐事件。
スピーディーでスタイリッシュな2つ目の事件もいいが、
2つ目の事件を知りえた後でもう一度読み返すと、
また、面白いと言ったら不謹慎だけど、
物語の掴みであり核であり、全ての象徴のように思えた。

読み終えて、これでいいのだなと問われたら、
いいわけないと答えたいが、
これもある種の解答なんだと思う。
だけど、全てが間違っていると答えられなくもない。
とても複雑な気分になった話だった。

posted by kakasi at 23:11 | Comment(0) | TrackBack(1) | 読書 作家別 「あ行」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『美女と竹林』 森見登美彦

美女と竹林  美女と竹林

森見氏が、変な汁を垂れ流しながら書いているのが妄想できてしまう。
おかしなという表現では、表しがたいほどの変なエッセイのようで、
得意なホラ話のようで、それでいて真実は語っているような、
わけのわからないものと仕上がってます。

中身は竹を切る話です。いやホントに。
じゃあ、美女はどこだ?
黒髪の乙女こと、本上まなみさんの登場では美女登場だが、
全体的に美女はどこに?
やっちゃった感がただよう、森見氏の栄光と苦悩と妄想と勘違いと竹を切る話。
グダグダしているが、思わず笑ってしまうそんな内容。
終盤の森見登美彦(MBC最高経営責任者)今、すべてを語る
まで入るともう、ギャグとしか思えなくなり、
本当に竹を切ったのかさえも疑ってしまう。
まあ、実際切ったんだろうけど……

まともに書けば、こじんまりとした内容なのだけど、
森美氏お得意の、妄想力と、自由気ままな筆さばきで、
ここまで、おかしすぎる話となっているのは、すごいことだと思う。
それにしても、竹林というものもいいもんですね。



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2008年11月08日

『クドリャフカの順番』 米澤穂信

クドリャフカの順番 (角川文庫 よ 23-3)  クドリャフカの順番

古典部シリーズの第三弾。
これまでのシリーズでずっと名前が出ていた、
カンヤ祭。いや、神山高校文化祭が行われる。

これまで、主人公の奉太郎のみの語りで物語が進んでいたが、
今回は、古典部メンバー4人の語りで物語が進んでいく。
4人のそれぞれの心情が見られて、それは楽しくもあり、切なくもあった。
おそらく、第一弾の『氷菓』からあったであろう、それぞれの人物の葛藤。
とりわけ、いつも活動的で、このシリーズでいう薔薇色というやつに
一番近いと思っていた人物。
福部里志のその思いは、なかなかに複雑だった。
『愚者のエンドロール』でも垣間見れたが、
今回ほど彼の決まり文句
データベースは結論を出せないんだ
この言葉が、これほど寂しく聞こえたことはない。

そういった、切ないエピソードが印象的だけど、
物語は、これまでにないほど面白く楽しい。
文化祭が舞台なのでお祭り騒ぎで、楽しいエピソードばかり。
里志の、数々の文化祭イベントでの対決であったり、
作りすぎた古典部文集『氷菓』の売りさばきであったり、
奉太郎の、わらしべ長者物語であったりと、
文化祭は退屈など感じさせない。
さらに、メインエピソードとなる怪盗十文字による、連続盗難事件。
4人のエピソードがパズルのように組み合わさり、
それぞれが、それぞれの役割を持って謎を追っていく。
さらには、奉太郎の姉も満を持しての登場。
文化祭の話だけあり、お祭り騒ぎであり、
盗難事件の結末は、祭りの後のような静けさが感じられた。

関連作品感想リンク
『氷菓』
『愚者のエンドロール』
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『愚者のエンドロール』 米澤穂信

愚者のエンドロール (角川スニーカー文庫) 愚者のエンドロール

古典部シリーズ第二弾は、未完全な映画の結末を考えるというものだった。
作者は、バークリーの『毒入りチョコレート事件』への
愛情と敬意を持って書いたと語っているが、そちらは未読なので、
僕は、純粋に米澤穂信の一つの作品として読んだ。

今回は一冊まるまる、映画の結末を推理することに費やしていて、
読んでいても推理に熱が入る。
ああでもない、こおでもない。
そう考えながらも、物語に没頭してしまい、
僕としては推理はそっちのけになってしまった。
そうなるほど、面白い話だ。
クラスの文化祭のミステリー映画を作っている最中、
脚本を担当する女生徒が心労で倒れてしまい、撮影は中断。
よって映像は、一人の被害者が出たところで終わってしまう。
結末はもちろん、犯人もわからない。
その映像の続きを作るために、主人公の奉太郎ら古典部が推理していく。
脚本の女生徒がいっさい語らないので、これはわからない。
限られた映像だけで、謎を解いていく。
わからない。わからないから、気になる。
わたし、気になります
古典部シリーズの常套文句が出てくるわけだ。

そして青春小説としても、やっぱり機能していて、
薔薇色に憧れる、灰色な主人公が、自分の価値を認めるために、
苦心して出したその答えが、エンドロールへと繋がる。
これがまた、せつない。
心を痛めた女生徒の本当のエンドロールは何なのか。
僕も、とても気になります。いや、気になりましたと言うところか。

関連作品感想リンク
『氷菓』
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2008年11月07日

『氷菓』 米澤穂信

氷菓 (角川スニーカー文庫)   氷菓

米澤さんのデビュー作であり、後にシリーズモノと続いていく
「古典部シリーズ」1作目『氷菓』
英語でYou can't escapeと小さく振ってある表紙の写真は、どこかの学校だろう。
古典部と名が付くだけに、高校生の話で、ミステリー。
いわゆる、日常の謎というもの。
派手さはないけど、見方しだいでは、とても面白しい。

ミステリーなんだけど、高校生活が舞台であるので、
必然的に青春小説のような、雰囲気を持っていて、無気力というか
やらなくてもいいことなら、やらない。
やらなければいけないことは手短に。
が、モットーな少エネな主人公といえども、
灰色なんかではなく、どこか青い春のようで、つまりは青春している。
別に、スポーツをしてるわけでもないし、恋愛してるわけでもないし、
個性的な周囲に引っ張られ、なし崩し的に、しぶしぶになのだが、
本人的には意外と気分悪くということもなさそう。
古典部なのに、古典には興味なく、姉の進めで入部しただけで、
みずから事件に突っ込むこともない。
だけど、どこか楽しんでいるとまでは言わないが、
悪くないといった感じで、逃げられないこの状況を受け入れているようにも感じた。
そして、だんだん自分の意識が変わっていることも受け入れている。
つまりは成長しているっていうことで、
その辺りが、やっぱり青春小説のように思える大きな部分かと思う。
もちろん日常の謎ミステリーとしても、楽しめる。
北村薫の「円紫さんと私」シリーズと似た印象。

小さな事件が積み重なって、
最後のタイトルにもなる「氷菓事件」は、この物語の集大成であり、
その解決は、古典部メンバーの皆の作品と呼べると思う。
まあ、実際作品になるのだけど、その辺りは次巻で。



posted by kakasi at 23:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 「米澤穂信」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月03日

『つむじ風食堂の夜』 吉田篤弘

つむじ風食堂の夜  つむじ風食堂の夜

今日はとても風の強い一日で、
仕事場の社員出口には、とても冷たい風が吹いていた。
外はすっかり暗くなっていて、身も心も冷たい。
そのはずなんだけど、地面に落ちている落ち葉が、
クルクルと風に巻かれて、みごとなつむじを。
つむじ風とまではいかないものの、
ああ、そういえば昨晩読んだ本が、つむじ風だったなと思い出し、
寒空の中で寒いはずが、ほんのり温かかった。それは心が。

この本も、そういうほんのり温かい気持ちになる本。
物語は、とてもゆっくりで、大げさでもなく、ファンタジーでもなく、
だからといって現実のようなお話でもない。
ストーリーが際立つわけでもない。
ただ、自然と笑みがこぼれるような、遠い昔にどこかで見たような……
懐かしいようで、その実こんな話は初めてで、
ああ〜、クラフト・エヴィングだな〜ってそういう感想。

吉田篤弘という名前の作者だけど、もうお一方と共同で、
クラフト・エヴィング商會という名義で本を出している。
僕は、彼らが作る物語というか世界観が大好き。
つまりは、吉田篤弘という作者の世界が大好き。

ちっぽけで、他でもないここ
本当かどうか知らないけど作者の故郷だという「月舟町」そこを舞台に、
多くの人が、多くの風が集まり、つむじ風となる交差点が現れる。
世界の果てまでどれくらい―というような話も好きだけど、
小さなここ≠ニ定義した場所の小さな話も僕は好きだ。
いつでもいる場所で、いつでも帰ってくるところ。
だから、作者は故郷を舞台として物語を書いたんだと思う。
そう思ったのは、物語中の言葉で
宇宙がどうあっても、
やっぱりわたしはちっぽけなここがいいんです。
他でもないここです。
ここはちゃんとここにありますもの。
消滅なんかしやしません。
わたしはいつだってここにいるし、
それでもって遠いところの知らない町や
人々のことを考えるのがまた愉しいんです
というものがあったからだ。

もしかして、作者はずっとここ≠ニ呼ばれる場所で考えていた空想を、
僕達に向かって、語りかけているんじゃないかなとも思えた。

2008年10月31日

『邪馬台国はどこですか? 』 鯨 統一郎

邪馬台国はどこですか? (創元推理文庫) 邪馬台国はどこですか?

歴史ミステリーというジャンルなんだろうけど、
完全なる卓上の上での論議。
ただ歴史の謎を飲み食いながらディスカッションしてるだけなんだけど、
これがなかなかにあなどれない。
タイトルの邪馬台国はどこですか?
という疑問には、邪馬台国は東北だと真顔で答え、
さらには岩手だと、有名な九州、畿内説を一蹴。
そんなまさかと思い読み進めると、
あながち有り得なくもないと思えてしまう、妙に説得力がある語り口に、
こちらもどんどん引き込まれてしまう。
「んな、馬鹿な!」と笑い飛ばしていたはずだが、
イメージはいつしか馬鹿話から離れられなくなり、
どんどん膨らんでゆく……
なんとも不思議な感覚に陥るのである。
という橋本直樹さんの解説がピッタリと当てはまる。

邪馬台国はどこですか?という邪馬台国論争の他にも、
後の鯨さんのタイムスリップシリーズに繋がる、
ブッダに関する「悟りを開いたのはいつですか?」
明治維新に関する「維新が起きたのはなぜですか?」
という、タイトルから図れない方向へと議論が進む内容などの、
豪華な短編6本。
個人的に好きというか驚きだったのはキリストの神秘に迫る
「奇蹟はどのようになされたのですか?」
こういう発想は今まで持ったこともなかったけど、妙に納得させられる。
同じ点では、戦国時代最大の謀叛劇「本能寺の変」を題材にした
「謀叛の動機はなんですか?」も侮りがたし。

こういう歴史ミステリーを解いていくものでは
井沢元彦さんの『逆説の日本史』を昔読んだとき、衝撃的だったけど、
こちらは、もっとフランクに読めるので、
お手軽なんだけど、なかなかに内容が濃い。
続編はもうすでに読んでしまっているのが惜しい……
他にはこのシリーズの本は出てないのかな…

関連作品感想リンク
『新・世界の七不思議』
『タイムスリップ明治維新』
『タイムスリップ釈迦如来』
posted by kakasi at 22:54 | Comment(0) | TrackBack(1) | 読書 作家別 「か行」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月28日

『タイムスリップ釈迦如来』 鯨 統一郎 

タイムスリップ釈迦如来 (講談社文庫 く 56-5)  タイムスリップ釈迦如来

もはや、何がなんだかわからない……
ただ、爆笑。

鯨さんのタイムスリップシリーズ第三弾。
今度の舞台はタイトルから想像できるようインドだった。
お釈迦様ですよ、ブッダですよ。
扱うものが大きすぎるだけに、
洒落のわからない人は読まないでくださいと前書きしとかないと、
仏教徒の方々が読んだら、暴動が起きそうで怖い…
まあ僕は、普通に洒落として読みました。
しかしまあ、この発想はなかった……

最初の『タイムスリップ森鴎外』は、現代にタイムスリップということで、
何が起こるかわからずハラハラして楽しかった。
2作目の『タイムスリップ明治維新』は、
道筋こそどうなるかわからないが、大体明治維新といえばコレだろと、
なんとなく予想できるものが多かった分、
やや不満が残ったのだけど、
近作は、知らないことだらけだった分、大いに楽しめた。
でも老子とかソクラテス出てくるし、
ラストはもうギャグとしか思えない対決になるし、
すっごいバカバカしい。ちょっと引いてしまったが、
こういうアホみたいな話は嫌いじゃない。
ここまで来たら、もうとことんやっちゃえと。
ブレーキなんて知らないぜ!…みたいな。
エンターテイメントってこういうことだよなと考えてしまった。
歴史好きには、たまらないか、お怒りか、
どっちかの両極端な話だと思う。

関連作品感想リンク
『タイムスリップ森鴎外』
『タイムスリップ明治維新』
posted by kakasi at 21:39 | Comment(2) | TrackBack(1) | 読書 作家別 「か行」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月26日

『スタンド・バイ・ミー―東京バンドワゴン』 小路幸也

スタンド・バイ・ミー―東京バンドワゴンスタンド・バイ・ミー―東京バンドワゴン

なんだかね、心がほんわか暖かい。
シリーズ3作目にもなるので、どんな風に物語が展開するとか、
どんなミステリーが待っているんだろうかとか、
そんなこと全然気にしなくなってしまったんだけど、
ちょっとこの、おっきな家族達を眺めていたいという気になっている。

『東京バンドワゴン』3作目、スタンド・バイ・ミー。
スタンド・バイ・ミーといえば、映画や小説で言えば、スティーブン・キング。
楽曲でいえば、ベン・E・キング。

そばにいて欲しい。

ただ、そばにあるだけでいい。
家族のあり方として僕はこういうことを望む。
ただあるだけで、絶対的な安心感がある。
だって、生まれたときからずっとあったものだから。
この物語の大家族達は、そんな気持ちなんじゃないだろうか。
例え家から離れていても、いつだって助けてやる。
信頼とかじゃなくて、そういうものだから。
家族だけじゃなくて、知り合いだって助けてやろう。
下町人情みたいな、そんな雰囲気がかもし出されていた。
例えて言うなら、ホームドラマ。そしてLOVEが流れている。
結局は色んな愛ってやつで出来ているんだろう、このドラマは。


関連作品感想リンク
『東京バンドワゴン』
『シー・ラブズ・ユー―東京バンドワゴン』
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2008年10月24日

『三四郎はそれから門を出た』 三浦しをん

三四郎はそれから門を出た 三四郎はそれから門を出た

最近めっきり小説を読む量が減ってしまった。
でも、雑誌とか漫画は毎日、毎日。
やっぱり僕は本が好き。
昨日は、仕事帰りに本屋で小一時間。
今日は休みだったので、一人でファミレスに本を持っていき、
はい一冊読了。それがこの本。
その後はブックオフで、まだ読んでない本が家で呼んでいるのに、
やっぱり買ってしまう。
本が好きで、やめようたってやめられない。
というか、やめようなんて思えない。

そんな本好きに、わかるわかる。いや、それはない。
世の中の流行? 何それ? 今読んでる本よりおもしろい?
とりあえず、一人身の本好きの自我が、なんとか保たれるようなエッセイだった。

憧れないようで、憧れる。

三浦しをんさんのエッセイ集『三四郎はそれから門を出た』
作者は、読書と妄想と、あとちょっとその他で生きているかのように感じてしまった。
その他のことも、家族の話とか、何気ない日常が面白いけど、
やっぱり本に関することが、面白い。
本への真っ直ぐのような、歪んだような、
とにかく情熱が感じられる。本に向かって思いが爆走しているように感じた。
そういう思いは憧れる。いや他の諸事情も考えると憧れないか。
でも、いいよなと思えてしまう。

本を読むだけが人生じゃない。
そうだけど、本を読むことが楽しみというか、
空気を吸うと同意義になってしまっている活字中毒者に捧げられたようで、
作者が自分で自分を救っているかのような、
たくさんの本への愛を唄っているエッセイだった。
その唄は美しくないかもしれないけど、心をぎゅっと掴んで止まない。

とか思うのだけど、僕の好きな部分は弟とのくだりのところ。
というのも、僕にも弟がいて、まったく同じような気持ちだから。
弟の冷ややかでいて、たまにうざったい態度も似ているし。
耐え難く変えがたい。
そんな弟の話題も面白いし、もちろん本に関することも面白い。
色々な本の話があるし、本屋のことや、本のしおりのことも。
小説に漫画に妄想に家族に旅行記にファッションに。
色んなところを楽しくつまめる、作者的に言うと
幕の内弁当のような作品だった。
あと、本の装丁好きです。
posted by kakasi at 01:05 | Comment(2) | TrackBack(1) | 読書 作家別 「ま行」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする