2010年03月04日

『子どもたちは夜と遊ぶ』 辻村深月

子どもたちは夜と遊ぶ 上 (1) (講談社文庫 つ 28-3)子どもたちは夜と遊ぶ 下 (3) (講談社文庫 つ 28-4)

いわゆる殺人ゲームの物語。
謎の人物「i」と「i」を追い求める「θ」の(θはすぐ誰か判明しますが)
のとても不幸な殺人ゲームの物語。

と進んでいくスリリングな物語のはずだけど、
終盤の大きな衝撃的事実に、はっきり言って意気消沈。
こんなことは、リアルさに欠けすぎている。
「i」に関してもたぶん大部分の人がなんとなく想像できると思う。
これはミステリーとやってしまうのはお粗末すぎるので、
個人的に恋愛小説だと今読み終えて思う。
とてもかみ合わない悲運な恋愛のお話。

ミステリーとしては最後の最後で思えなくなってしまうのだけど、
そういうことを抜きにすれば、とても魅力的な物語になっている。
殺人ゲームに関しては、あまりに救いがなさすぎて残酷でも、
ラストには、か細い希望が残っていて、
人の思いっていうのは、とても強いものだと感じられた。
でも、やっぱり儚い。
本当は、とても強く惹かれあっていても、
あまりにもすれ違いすぎてしまっている。
この恋は実らないだろう。
これが実ることは素敵なことかもしれないけど、
とても悲しいことなんだろうと思う。




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2010年02月26日

『冷たい校舎の時は止まる』 辻村深月

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)

圧倒的なボリューム感のある学園ミステリーだった。
少年少女8人のグループが物語のメイン。
というより、時の止まってしまった校舎内で、
8人のみが登場人物として進む、8人の話。

なぜ時が止まってしまったのか。
なぜ校舎内には8人しかいないのか。
なぜ校舎から抜け出すことができないのか。
なぜ8人は2ヵ月前に自殺した友達を覚えていないのか。
時計の針は、友達が自殺した時間で止まったまま動いていない。
8人は、この時が止まった校舎を抜け出す方法を探す。

こういった特殊な閉じられた空間の中でそれぞれが困惑しながらも、
校舎から脱出する方法を考えるが、
ミステリーの王道なことに、1人、また1人と人物が消えていく。
こういうの大好き。

8人の人物が、それぞれ主役かのように書かれていくので、
本当に文章量が多い。読めども進まず。
だけど、少しずつゆっくり物語は進んでいくのは、
物語の雰囲気に合っている気がする。ちょっとホラーな雰囲気に。

主人公の名前が作者と一緒なことに感情移入がしにくかったが、
ラストまでの展開は見事。長かったけど、読み応えがあった。
登場人物の関係がぴったりはまっていくラストシーンまでの流れは、
鳥肌が立ちそうに良かった。
8人のうちの菅原が良い役だった。
でも、主人公の辻村深月はあんまり好きになれない。

なんとも複雑な感想になってしまう物語で、好きだけど、苦手。
ジュブナイルな物語の青臭さと幼稚さが、
切なくも懐かしく、嫌悪感も抱かせるような、
生々しい物語だったと思うのは、僕が男だからだろうか。
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2010年02月25日

「少年メリケンサック」

少年メリケンサック スタンダード・エディション[DVD]

本だけは、読んだもの全てブログに載せようとしてるけど、
映画は最近見たものでも載せてないことが多くなってしまう。
でも、なぜか今回は載せてみたい気分に。

それは、この映画がすごい面白かったからだっ!
というわけでは失礼ながらないのだけど、
ただキレイにまとめられたような良い映画じゃなくて、
無茶苦茶で、わからないことばかりで、意味不明だけど、
インパクトがある映画だった。
そう思うのは僕が、たぶんパンクとかロックとか好きな人だからだと思う。
そして、この映画は一見すごい大衆向けで、
内容もコメディありのシリアスありのエンターテイメントだけど、
パンクがロックが好きな人と、多くのバンドに捧げられたかのような
映画でもあるから。

この映画を見る数時間前に、以前も見たけれど
「アイデン&ティティ」という映画を見た。
映画の作り方は違うけど、この少年メリケンサックも
音楽とバンドというものをすごいリスペクトしている。
逆にふざけてるんじゃないかと思うかもしれないけれど、
ロックは真面目にふざけるものだと思う。
僕の主観だけど。じゃなければ、みんないかれてる。
中には本当にいかれてる方もいらっしゃるだろうけど。
劇中で、パンクとは何かを数人にインタビューするシーンがあった。
それはみんなそれぞれ違う考えを持っている。
そんなように、これはあくまで僕の主観。

アイデン&ティティはあくまで一貫とした物語だった。
少年メリケンサックも、落ちぶれた中年パンクロッカーの再起
という点では一貫してたけど、色んな要素がありすぎて
正直よくわからなかった。要素の半分はコメディーでもあるし。

ぐちゃぐちゃしてたけど、目を見張るものもいっぱいだった。
主演の宮崎あおいの演技はすごい魅力的で、
こういうのも出来るんだと驚き、演技が上手いってわかる。
佐藤浩市もさすがで安心して見られます。
少年メリケンサックというバンドの前身がアイドルだとか、
それってパンクとハードロックの違いがあるけど、
レイジー・ラウドネスじゃんとか。
それと、銀杏BOYSの峯田さんが出ていた。

とまあ、個人的に興味がある部分は一杯。
でも、重要なのはパンクバンドの映画っていうこと。
つまり演奏のシーン。
でも、僕もパンクはよくわからない。
ピストルズ・クラッシュ・ラモーンズ、リバティーンズ。
明らかにパンクだ!というものはこれらくらいしか聞いてない。
よくパンクで重要なのは初期衝動と聞くが、
これらのバンドから、それはよく伝わる。
でも、少年メリケンサックは中年バンド。
初期衝動のかけらも感じられられないし、演奏も下手くそ。

じゃあ、年よりはパンクができないのか。
一生パンクは貫けないのか。
この辺りも実はテーマの一つだと思う。
そして僕が感じたのは、出来る出来ないじゃなくて、
やるのかやらないのか。
やりたいのかどうか。ということを問いかけてるんじゃないのかなと思った。

関連作品リンク
「アイデン&ティティ」


2010年02月13日

『凍りのくじら』 辻村深月

凍りのくじら (講談社文庫) 凍りのくじら

ちなみに今日行った本屋ではこの本の作者の、
辻村深月フェアがやっていた。郷土作家らしい。
僕の地元では、漫画化の小山ゆうコーナーが、ず〜とある。
大河の影響で小山ゆうの『お〜い竜馬』が拡販されていた。
考えてみると坂本龍馬って少し不思議な人物だ。
幕末の時代での世界を見る視野と薩長同盟を成立させるバイタリティ。
剣の達人なのに銃を好む。効率を求める手腕。
と、話がずれてしまった。
今日僕が買った雑誌の中のドラえもん映画主題歌大全集の記事で
この作者の文が載っていた。
タイトルから連想できないけど、
この『凍りのくじら』はドラえもんの話であったりもする。

独特の主人公の心理描写が際立つ、女の子の小説というのがまずの感想。
八方美人でも実は孤独な女の子の物語。
だけど、みんなの前では普通というか、上手く溶け込んでいても、
自分の部屋に一人戻ると、暗くなってしまうなど、
表と裏の心があるのなんて皆そうだと思う。特に若い頃なんて。
そんな裏の心が、吐け出されている物語だから、
少し重くて、少し痛い。
だけど、少し共感できたりする。
解説では、そんな主人公に感情移入ができないと書かれているけど、
そんなことないと思うのは、僕がこの主人公よりだからだろうか。

主人公に感情移入できても、できなくても、
この物語に、取り込まれてしまうのだとしたら、
きっとそれはドラえもんのせいなんだと思う。
小さい頃は、お兄ちゃんのような、お母さんのうような、友達のような、
みんなのドラえもん。
そんなドラえもんが物語と読者を繋げている、少し不思議なSF。
それがこの『凍りのくじら』なんだと思う。

この本は半年くらい前に読んで、今は実家に置いてあるのだけど、
最近実家に帰ったとき、母がこの本面白かったよと言った。
どう考えても、この本は若い人向けの話なんだけど、
もう50近い母がこう言ったのは、ドラえもんが繋いでいるからだと思う。

少し不思議なロボットドラえもんの、
少し不思議な秘密道具を引き合いにして展開される物語。
少し不思議で、少し切なく、少し感動。
そして、とても面白かった。
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2010年01月24日

お仕事は大変だ

ようやく残業完了。
明日というか、もう今日か。
今日、明日と2連休なので実家に帰ろうと思ったけど、
仕事と関係ないような、もろもろのお仕事を家に持ち込み、只今完了。
もうちょい要領よくやっとけば良かったけど、
仕事場ではトラブル続き+忙しい時期だったので、
こんな仕事やる暇なかった。
というより、この仕事やる意味あんのかなというような
後回しの後回し業務だけど、急にこんな仕事ふられると困る。
もうちょい早く言ってくれと上の人に愚痴りたい。
しかもすぐに出さないと時間切れだとか。

そんなこんなな仕事の話題は久しぶりすぎ。
というのも7連勤で仕事しかやってないよな日々でした。
今日は休みだけど、家で作った資料を持ち込み結局仕事場へGO。
土・日休暇関係ないお仕事なので。
地元へは車で4時間か〜
帰るのやめよか、とりあえず少し寝てから考えよう。
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2010年01月16日

『ひとがた流し』 北村薫

ひとがた流し (新潮文庫) ひとがた流し

すごくゆったりとした流れに沿うかのようなお話で、
じわりじわりと引き込まれていった。
大きな出来事が無いわけでもないけど、
終始一貫として、同じような雰囲気だった。
読む人にとっては、終盤は暗くて悲しいと思うけれど、
僕には最後まで同じだった。
人は、一生懸命生きているのだと。
その上で、多くの人に支えられてきたのだと。

この話は、一言でいえば病を抱えた
40代の女性とその周囲の人との友情の話だと思う。
一歩間違えば、これはただのお涙頂戴の物語になる。
僕は、そういうあざといのはあんまり好きでなくて、
そういうここで泣けるんだ、とちらちら見えるようなのは冷めてしまうが、
あくまで淡々と生と死を描いているのが好感だった。
そして、家族、友人、恋人の愛情が詰まっている。
生と死も明確なテーマだと思うけど、
愛情がとても強く打ちだされていると僕は思う。
女性の友情は僕にはよくわからないけれど、
この本のような関係は素敵だなと思う。
素敵だなんて普段使わない言葉だけど、素敵という言葉がしっくりくる。
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2010年01月15日

『屍鬼 1〜5巻』 小野不由美

屍鬼〈1〉 (新潮文庫)屍鬼〈2〉 (新潮文庫)屍鬼〈3〉 (新潮文庫)屍鬼〈4〉 (新潮文庫)屍鬼〈5〉 (新潮文庫)

昭和ミステリの舞台を思わせるような小さな村が舞台。
でも、現代が舞台で人物も若い子は現代風な設定が奇妙。
村で起こるある事件も奇妙なもので、物語はとらえどころがない。
じわじわと村に広がっていく事件は、次第に急速にスピードを上げていき、
僕としては、予想通りでもあり、
予想と違った物語の感想を作り上げていった。

村の多くの人物を語り部に扱っているうえ、
登場人物も多いので、なかなか全体像をつかむのが苦労するので、
最初の方は少し挫折しそうだったけど、
1巻を読み終えれば、圧倒的な物語の雰囲気に取りつかれたよう。

タイトルからホラーを意識して読み進めると、
もしかしたらミステリーかと考えを改められ、
いや、やっぱりホラーかと二転三転。
それは、読者だけでなく登場人物たちも同じで、
二転三転とするホラーミステリー。

あっと驚くような展開と緻密な構成、じわじわ広がる緊張感。
生と死と、善であることと、悪であること。
様々な対比から、正しい方向を見失いがちになる。
物語の人物たちも、想像できない極限状態の中で、
色々なことを見失いがちになっていく。
ある一極から見れば、正しい行動をしてるともとれるけど、
違う一極から見れば、間違っているともとれる。
物語の終幕も、正しい終わり方とは思えない部分もある。
全てが曖昧で、曖昧ながらも強い説得力を持つ物語でもある。
個々の人物の思いは難しいが、
個々の人物が集まった集団としての流れは良くわかる気がする。

この物語のように、あるものは生き残り、あるものは淘汰される。
生物の食物連鎖のような物語のようにも思えた。


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2010年01月14日

『イニシエーション・ラブ』 乾くるみ

イニシエーション・ラブ (文春文庫) イニシエーション・ラブ

恋愛小説は苦手なんだけど、これは見事なミステリー。
もちろん恋愛小説としても読めるけど、
最後の2行を読むと恐怖感じるミステリーに早変わり。
読んでいく最中で感じていた違和感が、
はっきりとした回答となって返答されたことで、
やっぱりなという感じと、物語の恐ろしさが同時にやってくる。
答え合わせというわけだけでないが、
もう一度読みたくなるような話だった。

タイトルにもなっている、
イニシエーション・ラブ=通過儀礼
としての恋愛というのは印象に残る。
普通の切ない恋愛小説としても良くできたいたし、
というより、恋愛小説として面白かった。
でも、すごいところはそれだけで終わらせないところ。
恋愛はわからない。

それと、僕が静岡生まれなので、
静岡が舞台だったのがうれしかった。やっぱ静岡はいいな。
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2010年01月12日

『解決まではあと6人―5W1H殺人事件』 岡嶋二人

解決まではあと6人―5W1H殺人事件 (講談社文庫)解決まではあと6人―5W1H殺人事件

平林貴子という謎の女性が、興信所を訪れて奇妙な依頼をするというミステリー。
一応依頼は完遂されるけど、どうもそれがしっくりこない。
依頼内容は達成されているのに。
そうして章が終わったら、また平林貴子という女性が、
他の興信所を訪れて奇妙な依頼をするという風に話は続いていく。

この構成がすごく興味深くて面白い。
依頼はカメラの持ち主を探してほしいとか、
喫茶店の場所を探してほしいとか、
この本の大きな事件の殺人事件には、的を得ない依頼ばかりなだけに、
どうのように関係してくるのかを、章が進むごとに考えるのが楽しい。

全てが繋がってくる最後は、大きな驚き。
解決まではあと6人。
WHO? WHERE? WHY? HOW? WHEN? WHAT?と進む物語。
どこで皆さんは事件を解けるのだろうか。
僕は、最後まで読んでようやくというところ。
事件は解けなかったけど、章ごとの興信所の探偵のキャラも良いし、
最後まで引き込まれて読めて、とても楽しめた。


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『おかしな二人―岡嶋二人盛衰記』 井上夢人

おかしな二人―岡嶋二人盛衰記 (講談社文庫)おかしな二人―岡嶋二人盛衰記


作家岡嶋二人(井上夢人、徳山諄一)の繁栄と衰退を描いたエッセイ。
ド素人の二人が江戸川乱歩賞を狙い、コンビを組み小説を作っていく。
お互いの足りないものをお互いで埋めあう。
そして訪れるすれ違い、恋人のような夫婦のようなコンビは、
まさにおかしな二人。

この本は、岡嶋二人の片割れである井上さんの著作。
岡嶋二人は今はもうコンビを解消してしまった作家だ。
これは、井上さんの視点で描かれた岡嶋二人の物語。
岡嶋二人は両方とも男性なのだけど、
二人の歩みは、まるで恋人のよう。
出会い、共に楽しみ、やがて作家として繁栄、
そしてすれ違い、なんとか一緒にやっていこうと努力するけども、
終わってしまうこの二人の物語は、恋愛小説のよう。

岡嶋二人の、各作品の執筆背景もこと細かく書かれており、
これから岡嶋二人の作品を読む人には、
多少ネタバレになってしまうし、わからない部分も出てくるけど。
このおかしな二人は、単なるエッセイでなくて、
小説として、物語が上手く書かれていて十分に楽しめる。

井上さんにとって今や、架空といってもいい作家岡嶋二人への、
皮肉とも、未練とも、決別ともとれるような本だった。

おかしな二人=岡嶋二人

二人は、この本を読んだだけでも読者には、やっぱりわからない。
きっと、井上さんにもよくわからなかったんだと思う。
だから、おかしな二人というタイトルだったんじゃないだろうか。
友達のようで、恋人のようで、夫婦のようで、戦友だった。
もしかしたら、互いの利益のために共同していただけかもしれないし、
今となっては、岡嶋二人はもういないわけだから、それはわからない。
ただ、いい作品を作っていたというのは本当だと思う。
まだ、岡嶋二人の本を少ししか読んでないけれど、どれも魅力的だったから。

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2010年01月10日

『あゝ、荒野』 寺山修司

あゝ、荒野 (角川文庫) あゝ、荒野


胸が痛くなるような、昭和を感じる2人のボクサーの物語。
寺山修二を僕は知らない世代だけど、人気があったのがわかる気がする。
独特なんだよな、考え方が刹那的というかなんというか。
小説なんだから、その考え方が寺山修司という人間を表してるか
さだかではないけれども、まっとうでない何かを感じる。
我ながら、ずいぶんと曖昧な感想だけども。
現代ではなかなかお目にかかれない、ぎりぎりの感性。

物語は60年代新宿。
もう、一種の時代小説みたいだ。時代の独特の匂いが文体から湧きたつよう。
今にも残るものはあるのだろうけど、
全てが、遠い昔の物語のように感じてしまう。
はなやかとは無縁の泥臭く熱くて、
生の鼓動と死の匂いが強い。ぎりぎりの物語。とても強い物語。
読み解くというより、感じる小説のように感じた。
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2010年01月09日

『宵山万華鏡』森見登美彦 

宵山万華鏡 宵山万華鏡


非常に不思議な物語集。
色々な謎が解けたような解けないような不思議で面白い話だった。
京都の祇園祭を様々な視点で描く万華鏡を覗くような話。
馬鹿馬鹿しさと恐ろしさと面白さが混じり合う怪奇譚で、
森見さんの今までの作品をぶち込んで、かき混ぜたような作品だった。

お祭りの醍醐味のきらびやかさと、
一歩道を外した場面で見られるおどろおどしさ。
2つが上手く混じり合っていて、祭りの表裏を表しているかのよう。
まさにお祭り騒ぎな物語から、
摩訶不思議な現象がおこる恐ろしい物語まで6つの物語をつなぐ
宵山の祇園祭は、本当に各物語、各登場人物ごとに顔が変わっていく。
それは、本当に万華鏡のようなもので、楽しみ方は多種多様。
この本の中での各物語ごとのリンクする部分や、
森見さんの過去作品とのリンクする部分もあり、
そういうところも楽しめるのが、またうれしい。


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2010年01月08日

『鴨川ホルモー』万城目学

鴨川ホルモー (角川文庫)鴨川ホルモー

もはや何が何だか……
本の内容にしても、自分が読んだ時期にしても。
確かこのホルモーの映画が始まる前のことでして、
何をいまごろといった気分。

内容の方は森見登美彦さんが好きならこれも好きかなと。
同じ雰囲気を感じる。バカバカしくて、テンションが高い!
わけのわからないところが魅力で、若さがほとばしる一作。

ホルモーって何だ??
そこが本書の窓口で、そこから色々な疑問が連発。
でも、その疑問を吹っ飛ばすようなテンションで突き進むので苦にならない。
そして、基本的には大学生が主人公の青春小説なので、
さほど特殊すぎる分野でもない。

なんだけど、京都という地の理を生かした異界としての京都も扱っていて、
それが、まさにホルモーの真骨頂。
現地と異界を結ぶお祭り騒ぎのホルモーも良いけど、
おかしな人間関係がまた魅力的。


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『木曜日だった男』チェスタトン

木曜日だった男 一つの悪夢 (光文社古典新訳文庫)木曜日だった男 一つの悪夢

とっくに明けておりますが、改めてあけましておめでとうございます。
正月などどこ吹く風で仕事だったので、
ブログでも正月などスルーでいきます。
さっそく本の話に。
しばらくは去年のブログが止まっていた間に読んだ本でいきます。

ミステリーかと思いきや喜劇。真面目に不真面目。
七曜会という謎の組織を廻るドタバタ劇。
「街」というゲームの七曜会というシナリオの元ネタかな。
タイトルの『木曜日だった男』から、もしかしてと思い手に取ると、
七曜会という単語がでてきいてやっぱりなぁと思った。
七曜会という組織に入り、その実態を探るということも、
面白おかしい、不可思議な話ということも同じであったことだし。

大筋は読みやすいけど、細かいところで裏切られる。
先が読めるんだけど、その過程がバタバタしていてそこが面白い。
お約束的な流れがわかりやすすぎるのだけど、
やっぱりそこが面白い。お前もかよっ!やっぱりっ!って。

不思議なアドベンチャーでいて、哲学的なおかしな話だった。

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2009年11月25日

『海を見る人』 小林泰三

海を見る人 (ハヤカワ文庫 JA) 海を見る人

ハヤカワ文庫っていえばSFなイメージで、
難しそうだなって思ったのだけどタイトルから、
ヘミングウェイの『老人と海』を連想させられ気になってしまい、
後書きなどを読んでみると解説に、
計算機を片手に読んでなど書いてあったので断念しようと思ったが、
ハリーポッターみたいに読めばいいんだよと作者が語っていたので、
買ってみることにした、表紙もなんかいい雰囲気なので。

この本は7つの短編。
同じ世界なんだろうなとは思うけど、独立した7つの物語。
少女が先生と呼ばれる人物に7つの物語を語る形式になっている。
科学の話でなく、物語を聞きたい。
不思議でせつない物語を聞きたいと言う少女に、
語る物語は、ほんとにバラバラなんだけど、
重力っというもので繋がっているのだと思う。
これは宇宙の物語で、不思議な世界の物語で、未来の物語。
地球のように内側へ重力が、かかる世界でなく、
外側へと引っ張られる外の世界の物語。
重力に縛られながらも、必死にもがいていく話なんだと思う。
あるいは何かの縛りからもがいていく話といっても良いと思う。

・「時計の中のレンズ」
遊牧民族の少年村長が、歪んだ円筒世界から楕円体世界を目指す物語。
崑崙とか単語が出てくると古代中国を、
遊牧民族というとモンゴルを連想するのだけど、
地球の話ではない……と思う。
政治の話だったり、恋愛要素も混じったりしてるけど、
本質的には冒険譚何だと思う。摩訶不思議な冒険譚。
小さな村長の頑張りが妙に微笑ましかったりもした。

・「独裁者の掟」
途中から物語がこんがらがってしまい、
読み進めていくと、ようやく全てがわかった気がしたが、
どこからどこが?
と、不思議な気分の物語。
冷徹な独裁者と、小さな少女の物語が交互に語られていくこの話。
この『海を見る人』の中で一番好き。
冷徹な独裁者の苦悩と少女の苦悩がピタリとハマる瞬間が、
素晴らしくも、悲しい物語。

彼女は良い人?それとも悪い人?
何かがひっくりかえったような気がするわ。
物語を聞いた少女が先生に問いかける。
その答えを決めつけることは僕にもできない。
「いいえ。わたしは償うのよ」
最後の一文が、物哀しい。

・「天国と地獄」
僕の読解力と想像力の足りなさのせいで、
どうも物語の世界が上手くとらえきれなかった。
だけど、こういうものと思いこめば楽しめた。
魔法の世界では、その魔法の在り方の原理はわからなくたって楽しめる。
SFの世界での科学の在り方の原理がわからなくてもまたしかり。

これは何が目的かはよくわからなかった。
ただ、登場人物が生きていこうとしていた。
生きていく目的がある人物も、特にはそんな目的があるとはわからない人物も。

難しいけどオーソドックスなSFだと思う。
あくまで僕がイメージする未来の宇宙世界のSF。
それでいてミステリアスで、とても大きい話。
世界の秘密という壮大なミステリーに挑むことになる話。
結末は悲しいけど、そこに至る過程はとても興奮した。

・「キャッシュ」
いわゆる仮想現実を舞台にした話。
嘘の世界とも語られているが、嘘で済むような話ではなかった。
誰もがそこの世界は仮想世界としていながら生活する世界。
仮想と現実が狂ってしまうとまでいかないが、
仮想と現実の差異からなるバグが仮想世界を追い詰める話。

これもなかなか面白かった。
主人公が、探偵ということからか、ややハードボイルドテイスト。
アリスのひとかけらが世界に残っている。
そうあれば良いなと願いたい。

・「母と子と渦を旋る冒険」
一言で言うと子供の視点で語られる母の元に帰る物語。
だけど、その一言じゃ全然済まない話。
話自体は、本当に母の所に帰ろうとするだけの話なんだけど、
母と子に「渦」が加わってくるので、SFになってくる。
SFというか科学とか物理の話。
母と子の関係もただの母と子でないので、SF。
人間ではなく生物。高度な知識を得た科学生物といった印象。

・「海を見る人」
表題作。実に哀愁漂う。
SFとかじゃなく、普通の物語としても素晴らしい作品だと思う。
カムロミという少女がでてきて、
一瞬「天国と地獄」の主人公のカムロギと関連するかと思いきや、
そんなことは全然ない、独立した話だった。

場所によって流れる時間が違う世界を舞台にしたこの話。
違う時間の流れ方をする村同士に住む少年と少女の話。
少年が、海の向こうにいる少女を眺めていたという話。
はっきり言ってラブストーリー。
とっても綺麗でとっても残酷なラブストーリーといったら、
ありふれている。ありふれているけど、やっぱり良い話。

・「門」
すべての終わりと始まりの物語と先生から語られるこの物語。
時間を越えることの出来る門で行われた物語。
原因は結果となり、結果は原因となる。

まさにSFで、ようやくきたハッピーエンド。
若い少女の宇宙戦艦艦長と辺境のコロニーに住む少年。
そして少年ら、コロニーに住む人々の先生である大姉の3人を廻る物語。
苺ミルフィーユを食べながら読むのが正解な物語。

と、こんな7つの物語の短編集。
SFが苦手でも楽しめるというのは嘘じゃない。どれも感慨深い。
「門」を最後に持ってきたのは正解だなぁ。
おかげで読了感が、すがすがしい。
posted by kakasi at 04:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 作家別 「か行」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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