2010年11月24日

『ヴィーナスの命題』 真木武志

ヴィーナスの命題 (角川文庫)  ヴィーナスの命題

大きな物語が欲しいのよ

何とも心踊らされる言葉なんだろう。
僕が小説というか、創作の物語に惹かれているのは、大きな物語が欲しいからだ。
結局のところ、現実は小さな物語の固まりでしかないので、
創作の物語に自分を投影して、夢を見ている。
でも、今のご時世に大きな物語なんて、ましてや日本では難しい。
たとえ、物語の中だって。

ヴィーナスの命題の文中のこの言葉に惹かれるのは、
壮大な物語みたいな響きに間違ってとってしまうからなのか。
ミスリードとすら呼べないほどの、酷い勘違いだけど、
言葉の響きって重要だと感じた。


ある高校の自殺事件がきっかけとなり、次々と起こる事件に翻弄され、
真相を追っていく少年少女達……というのが物語だ。
なんとも典型的なミステリー小説だけど、
漫画のキャラクターのようにキャラ付けされた人物が、
上手くマッチしていて青春小説の味付けがされている。


はっきり言ってしまうと、目まぐるしく変わる視点の変化が
どうにも読みにくくて、読み進めるというより、読み解いていくという感覚だった。
ある意味、それはミステリーの醍醐味なんだけど、
1回よむだけでは、わからない。
2回読んでも、真相はよくわからない。
恐らく、こういうことだったんじゃないかという曖昧なイメージしか得られないので、
カタルシスには欠けるけど、ささやかで綺麗な物語だった。
大きな物語になりえた物語は、小さな物語で締めくくられていた。
これは悪いことなんかじゃない。

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2010年11月23日

『沙門空海 唐の国にて鬼と宴す』 夢枕獏

沙門空海唐の国にて鬼と宴す〈巻ノ1〉 (徳間文庫) [文庫] / 夢枕 獏 (著); 徳間書店 (刊)  沙門空海唐の国にて鬼と宴す〈巻ノ2〉 (徳間文庫) [文庫] / 夢枕 獏 (著); 徳間書店 (刊)

沙門空海唐の国にて鬼と宴す〈巻ノ3〉 (徳間文庫) [文庫] / 夢枕 獏 (著); 徳間書店 (刊)  沙門空海唐の国にて鬼と宴す〈巻ノ4〉 (徳間文庫) [文庫] / 夢枕 獏 (著); 徳間書店 (刊)


更新していない間読んでいた本のことを、しばらく書いていきたい。
まずは、怪しげなタイトルの歴史伝奇小説から。


弘法大師の名でも有名な空海の若き日の冒険を描いた、フィクション。
作者の古の時代への誇大とも思える想像に文章が負けていない改作だと思う。
それを支えているのは、やっぱり実在した空海の数々の逸話だと思うので、
作者もさることながら、空海という人物は偉大な人だ。


衰退をたどり始めた唐の国に、遣唐使として派遣された、
まだ留学僧だった空海と、日本でのいわゆるエリートの橘 逸勢の2人をメインに
文化、宗教、友情、愛そして中国独特の怪奇幻想を交えながら進む物語は、
エンターテイメント性にあふれている。
史実も交えながら、こうだったらさぞ面白かろうという作者の思いが伝わってくる。

唐の国に渡った2人が、巻き込まれる怪しげな事件。
空海が密を得ようとする過程、現地の様々な人物との出会い。
そして化け物。
「唐の国にて鬼と宴す」というタイトルは誇張でなく、
まさにその通り。

白居易や楊貴妃といった有名な名前も大きなキーパーソンに。
この辺りの名前が出だしてからは、スケール倍増。
わくわくが止まらない。

虚しく往きて実ちて帰る

この言葉は空海が、恵果和尚に贈った言葉だけど、
橘 逸勢が思っている言葉だとも思う。空海に対して。

中国の歴史はほとんど知らない自分にもわかりやすく、
そして何より面白く読めた。

歴史は語らない。
だけど、想像はできる。
人の想像力は、すごいなと感じられた。

『夏への扉 新訳版』ロバート・A・ハインライン

夏への扉[新訳版] 夏への扉[新訳版]


いつの間にか、熱っついけど、大好きな夏が終わって冬になるようです。

それでも、大好きな夏への扉を探しています。

更新しない間に25歳になりますたkakasiです。


昨年買ったはいいけど、なかなか読む気が起らず今年ようやく読めたのが、

SFの巨匠、ロバート・A・ハインラインの『夏への扉』新訳版。

なんだかんだ半年に一回は、旧約版は読んでいた。

僕にとってこの夏への扉は、いつだって爽やかな気分にさせてくれる、

大事な大事な本で、オールタイムベストな物語なので。


だからか、新訳で違和感があると嫌だなぁと思っていて読まずに本棚に埋もれていた。

でも、今回読んでそんなことは杞憂でしかなくて、

名作はやっぱり名作で、むしろ新訳になって読みやすく、

より多くの人に勧められるのではないかと思う。

それにしても、旧約とか新訳とか言うと、なんか聖書みたい。

読んだことないけど……


夏への扉は、ある意味平凡な物語でもあると思う。

本が出た当時は、斬新な設定だと思うけど、

現代では、目新しくないSF設定があるだけでしかなく、

ご都合主義なハッピーエンドな物語。

とてもチープで説得力がない。


でも、それを上回るものがある。

それは、物語でネコのピートが、

夏に続く扉を探し続けるかのような「希望」というものじゃないかと思う。

希望があるエンターテイメント作品は、やっぱりハッピーエンドでないと嘘だろう。


夏に続く扉はあるのだ。信じるのだ。見つけ歩くのだ。

そうハインラインが言っているような気がした。


関連作品感想リンク
『夏への扉』旧約版
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2010年03月04日

『子どもたちは夜と遊ぶ』 辻村深月

子どもたちは夜と遊ぶ 上 (1) (講談社文庫 つ 28-3)子どもたちは夜と遊ぶ 下 (3) (講談社文庫 つ 28-4)

いわゆる殺人ゲームの物語。
謎の人物「i」と「i」を追い求める「θ」の(θはすぐ誰か判明しますが)
のとても不幸な殺人ゲームの物語。

と進んでいくスリリングな物語のはずだけど、
終盤の大きな衝撃的事実に、はっきり言って意気消沈。
こんなことは、リアルさに欠けすぎている。
「i」に関してもたぶん大部分の人がなんとなく想像できると思う。
これはミステリーとやってしまうのはお粗末すぎるので、
個人的に恋愛小説だと今読み終えて思う。
とてもかみ合わない悲運な恋愛のお話。

ミステリーとしては最後の最後で思えなくなってしまうのだけど、
そういうことを抜きにすれば、とても魅力的な物語になっている。
殺人ゲームに関しては、あまりに救いがなさすぎて残酷でも、
ラストには、か細い希望が残っていて、
人の思いっていうのは、とても強いものだと感じられた。
でも、やっぱり儚い。
本当は、とても強く惹かれあっていても、
あまりにもすれ違いすぎてしまっている。
この恋は実らないだろう。
これが実ることは素敵なことかもしれないけど、
とても悲しいことなんだろうと思う。




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2010年02月26日

『冷たい校舎の時は止まる』 辻村深月

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)

圧倒的なボリューム感のある学園ミステリーだった。
少年少女8人のグループが物語のメイン。
というより、時の止まってしまった校舎内で、
8人のみが登場人物として進む、8人の話。

なぜ時が止まってしまったのか。
なぜ校舎内には8人しかいないのか。
なぜ校舎から抜け出すことができないのか。
なぜ8人は2ヵ月前に自殺した友達を覚えていないのか。
時計の針は、友達が自殺した時間で止まったまま動いていない。
8人は、この時が止まった校舎を抜け出す方法を探す。

こういった特殊な閉じられた空間の中でそれぞれが困惑しながらも、
校舎から脱出する方法を考えるが、
ミステリーの王道なことに、1人、また1人と人物が消えていく。
こういうの大好き。

8人の人物が、それぞれ主役かのように書かれていくので、
本当に文章量が多い。読めども進まず。
だけど、少しずつゆっくり物語は進んでいくのは、
物語の雰囲気に合っている気がする。ちょっとホラーな雰囲気に。

主人公の名前が作者と一緒なことに感情移入がしにくかったが、
ラストまでの展開は見事。長かったけど、読み応えがあった。
登場人物の関係がぴったりはまっていくラストシーンまでの流れは、
鳥肌が立ちそうに良かった。
8人のうちの菅原が良い役だった。
でも、主人公の辻村深月はあんまり好きになれない。

なんとも複雑な感想になってしまう物語で、好きだけど、苦手。
ジュブナイルな物語の青臭さと幼稚さが、
切なくも懐かしく、嫌悪感も抱かせるような、
生々しい物語だったと思うのは、僕が男だからだろうか。
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2010年02月25日

「少年メリケンサック」

少年メリケンサック スタンダード・エディション[DVD]

本だけは、読んだもの全てブログに載せようとしてるけど、
映画は最近見たものでも載せてないことが多くなってしまう。
でも、なぜか今回は載せてみたい気分に。

それは、この映画がすごい面白かったからだっ!
というわけでは失礼ながらないのだけど、
ただキレイにまとめられたような良い映画じゃなくて、
無茶苦茶で、わからないことばかりで、意味不明だけど、
インパクトがある映画だった。
そう思うのは僕が、たぶんパンクとかロックとか好きな人だからだと思う。
そして、この映画は一見すごい大衆向けで、
内容もコメディありのシリアスありのエンターテイメントだけど、
パンクがロックが好きな人と、多くのバンドに捧げられたかのような
映画でもあるから。

この映画を見る数時間前に、以前も見たけれど
「アイデン&ティティ」という映画を見た。
映画の作り方は違うけど、この少年メリケンサックも
音楽とバンドというものをすごいリスペクトしている。
逆にふざけてるんじゃないかと思うかもしれないけれど、
ロックは真面目にふざけるものだと思う。
僕の主観だけど。じゃなければ、みんないかれてる。
中には本当にいかれてる方もいらっしゃるだろうけど。
劇中で、パンクとは何かを数人にインタビューするシーンがあった。
それはみんなそれぞれ違う考えを持っている。
そんなように、これはあくまで僕の主観。

アイデン&ティティはあくまで一貫とした物語だった。
少年メリケンサックも、落ちぶれた中年パンクロッカーの再起
という点では一貫してたけど、色んな要素がありすぎて
正直よくわからなかった。要素の半分はコメディーでもあるし。

ぐちゃぐちゃしてたけど、目を見張るものもいっぱいだった。
主演の宮崎あおいの演技はすごい魅力的で、
こういうのも出来るんだと驚き、演技が上手いってわかる。
佐藤浩市もさすがで安心して見られます。
少年メリケンサックというバンドの前身がアイドルだとか、
それってパンクとハードロックの違いがあるけど、
レイジー・ラウドネスじゃんとか。
それと、銀杏BOYSの峯田さんが出ていた。

とまあ、個人的に興味がある部分は一杯。
でも、重要なのはパンクバンドの映画っていうこと。
つまり演奏のシーン。
でも、僕もパンクはよくわからない。
ピストルズ・クラッシュ・ラモーンズ、リバティーンズ。
明らかにパンクだ!というものはこれらくらいしか聞いてない。
よくパンクで重要なのは初期衝動と聞くが、
これらのバンドから、それはよく伝わる。
でも、少年メリケンサックは中年バンド。
初期衝動のかけらも感じられられないし、演奏も下手くそ。

じゃあ、年よりはパンクができないのか。
一生パンクは貫けないのか。
この辺りも実はテーマの一つだと思う。
そして僕が感じたのは、出来る出来ないじゃなくて、
やるのかやらないのか。
やりたいのかどうか。ということを問いかけてるんじゃないのかなと思った。

関連作品リンク
「アイデン&ティティ」


2010年02月13日

『凍りのくじら』 辻村深月

凍りのくじら (講談社文庫) 凍りのくじら

ちなみに今日行った本屋ではこの本の作者の、
辻村深月フェアがやっていた。郷土作家らしい。
僕の地元では、漫画化の小山ゆうコーナーが、ず〜とある。
大河の影響で小山ゆうの『お〜い竜馬』が拡販されていた。
考えてみると坂本龍馬って少し不思議な人物だ。
幕末の時代での世界を見る視野と薩長同盟を成立させるバイタリティ。
剣の達人なのに銃を好む。効率を求める手腕。
と、話がずれてしまった。
今日僕が買った雑誌の中のドラえもん映画主題歌大全集の記事で
この作者の文が載っていた。
タイトルから連想できないけど、
この『凍りのくじら』はドラえもんの話であったりもする。

独特の主人公の心理描写が際立つ、女の子の小説というのがまずの感想。
八方美人でも実は孤独な女の子の物語。
だけど、みんなの前では普通というか、上手く溶け込んでいても、
自分の部屋に一人戻ると、暗くなってしまうなど、
表と裏の心があるのなんて皆そうだと思う。特に若い頃なんて。
そんな裏の心が、吐け出されている物語だから、
少し重くて、少し痛い。
だけど、少し共感できたりする。
解説では、そんな主人公に感情移入ができないと書かれているけど、
そんなことないと思うのは、僕がこの主人公よりだからだろうか。

主人公に感情移入できても、できなくても、
この物語に、取り込まれてしまうのだとしたら、
きっとそれはドラえもんのせいなんだと思う。
小さい頃は、お兄ちゃんのような、お母さんのうような、友達のような、
みんなのドラえもん。
そんなドラえもんが物語と読者を繋げている、少し不思議なSF。
それがこの『凍りのくじら』なんだと思う。

この本は半年くらい前に読んで、今は実家に置いてあるのだけど、
最近実家に帰ったとき、母がこの本面白かったよと言った。
どう考えても、この本は若い人向けの話なんだけど、
もう50近い母がこう言ったのは、ドラえもんが繋いでいるからだと思う。

少し不思議なロボットドラえもんの、
少し不思議な秘密道具を引き合いにして展開される物語。
少し不思議で、少し切なく、少し感動。
そして、とても面白かった。
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2010年01月24日

お仕事は大変だ

ようやく残業完了。
明日というか、もう今日か。
今日、明日と2連休なので実家に帰ろうと思ったけど、
仕事と関係ないような、もろもろのお仕事を家に持ち込み、只今完了。
もうちょい要領よくやっとけば良かったけど、
仕事場ではトラブル続き+忙しい時期だったので、
こんな仕事やる暇なかった。
というより、この仕事やる意味あんのかなというような
後回しの後回し業務だけど、急にこんな仕事ふられると困る。
もうちょい早く言ってくれと上の人に愚痴りたい。
しかもすぐに出さないと時間切れだとか。

そんなこんなな仕事の話題は久しぶりすぎ。
というのも7連勤で仕事しかやってないよな日々でした。
今日は休みだけど、家で作った資料を持ち込み結局仕事場へGO。
土・日休暇関係ないお仕事なので。
地元へは車で4時間か〜
帰るのやめよか、とりあえず少し寝てから考えよう。
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2010年01月16日

『ひとがた流し』 北村薫

ひとがた流し (新潮文庫) ひとがた流し

すごくゆったりとした流れに沿うかのようなお話で、
じわりじわりと引き込まれていった。
大きな出来事が無いわけでもないけど、
終始一貫として、同じような雰囲気だった。
読む人にとっては、終盤は暗くて悲しいと思うけれど、
僕には最後まで同じだった。
人は、一生懸命生きているのだと。
その上で、多くの人に支えられてきたのだと。

この話は、一言でいえば病を抱えた
40代の女性とその周囲の人との友情の話だと思う。
一歩間違えば、これはただのお涙頂戴の物語になる。
僕は、そういうあざといのはあんまり好きでなくて、
そういうここで泣けるんだ、とちらちら見えるようなのは冷めてしまうが、
あくまで淡々と生と死を描いているのが好感だった。
そして、家族、友人、恋人の愛情が詰まっている。
生と死も明確なテーマだと思うけど、
愛情がとても強く打ちだされていると僕は思う。
女性の友情は僕にはよくわからないけれど、
この本のような関係は素敵だなと思う。
素敵だなんて普段使わない言葉だけど、素敵という言葉がしっくりくる。
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2010年01月15日

『屍鬼 1〜5巻』 小野不由美

屍鬼〈1〉 (新潮文庫)屍鬼〈2〉 (新潮文庫)屍鬼〈3〉 (新潮文庫)屍鬼〈4〉 (新潮文庫)屍鬼〈5〉 (新潮文庫)

昭和ミステリの舞台を思わせるような小さな村が舞台。
でも、現代が舞台で人物も若い子は現代風な設定が奇妙。
村で起こるある事件も奇妙なもので、物語はとらえどころがない。
じわじわと村に広がっていく事件は、次第に急速にスピードを上げていき、
僕としては、予想通りでもあり、
予想と違った物語の感想を作り上げていった。

村の多くの人物を語り部に扱っているうえ、
登場人物も多いので、なかなか全体像をつかむのが苦労するので、
最初の方は少し挫折しそうだったけど、
1巻を読み終えれば、圧倒的な物語の雰囲気に取りつかれたよう。

タイトルからホラーを意識して読み進めると、
もしかしたらミステリーかと考えを改められ、
いや、やっぱりホラーかと二転三転。
それは、読者だけでなく登場人物たちも同じで、
二転三転とするホラーミステリー。

あっと驚くような展開と緻密な構成、じわじわ広がる緊張感。
生と死と、善であることと、悪であること。
様々な対比から、正しい方向を見失いがちになる。
物語の人物たちも、想像できない極限状態の中で、
色々なことを見失いがちになっていく。
ある一極から見れば、正しい行動をしてるともとれるけど、
違う一極から見れば、間違っているともとれる。
物語の終幕も、正しい終わり方とは思えない部分もある。
全てが曖昧で、曖昧ながらも強い説得力を持つ物語でもある。
個々の人物の思いは難しいが、
個々の人物が集まった集団としての流れは良くわかる気がする。

この物語のように、あるものは生き残り、あるものは淘汰される。
生物の食物連鎖のような物語のようにも思えた。


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2010年01月14日

『イニシエーション・ラブ』 乾くるみ

イニシエーション・ラブ (文春文庫) イニシエーション・ラブ

恋愛小説は苦手なんだけど、これは見事なミステリー。
もちろん恋愛小説としても読めるけど、
最後の2行を読むと恐怖感じるミステリーに早変わり。
読んでいく最中で感じていた違和感が、
はっきりとした回答となって返答されたことで、
やっぱりなという感じと、物語の恐ろしさが同時にやってくる。
答え合わせというわけだけでないが、
もう一度読みたくなるような話だった。

タイトルにもなっている、
イニシエーション・ラブ=通過儀礼
としての恋愛というのは印象に残る。
普通の切ない恋愛小説としても良くできたいたし、
というより、恋愛小説として面白かった。
でも、すごいところはそれだけで終わらせないところ。
恋愛はわからない。

それと、僕が静岡生まれなので、
静岡が舞台だったのがうれしかった。やっぱ静岡はいいな。
posted by kakasi at 21:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 作家別 「あ行」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月12日

『解決まではあと6人―5W1H殺人事件』 岡嶋二人

解決まではあと6人―5W1H殺人事件 (講談社文庫)解決まではあと6人―5W1H殺人事件

平林貴子という謎の女性が、興信所を訪れて奇妙な依頼をするというミステリー。
一応依頼は完遂されるけど、どうもそれがしっくりこない。
依頼内容は達成されているのに。
そうして章が終わったら、また平林貴子という女性が、
他の興信所を訪れて奇妙な依頼をするという風に話は続いていく。

この構成がすごく興味深くて面白い。
依頼はカメラの持ち主を探してほしいとか、
喫茶店の場所を探してほしいとか、
この本の大きな事件の殺人事件には、的を得ない依頼ばかりなだけに、
どうのように関係してくるのかを、章が進むごとに考えるのが楽しい。

全てが繋がってくる最後は、大きな驚き。
解決まではあと6人。
WHO? WHERE? WHY? HOW? WHEN? WHAT?と進む物語。
どこで皆さんは事件を解けるのだろうか。
僕は、最後まで読んでようやくというところ。
事件は解けなかったけど、章ごとの興信所の探偵のキャラも良いし、
最後まで引き込まれて読めて、とても楽しめた。


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『おかしな二人―岡嶋二人盛衰記』 井上夢人

おかしな二人―岡嶋二人盛衰記 (講談社文庫)おかしな二人―岡嶋二人盛衰記


作家岡嶋二人(井上夢人、徳山諄一)の繁栄と衰退を描いたエッセイ。
ド素人の二人が江戸川乱歩賞を狙い、コンビを組み小説を作っていく。
お互いの足りないものをお互いで埋めあう。
そして訪れるすれ違い、恋人のような夫婦のようなコンビは、
まさにおかしな二人。

この本は、岡嶋二人の片割れである井上さんの著作。
岡嶋二人は今はもうコンビを解消してしまった作家だ。
これは、井上さんの視点で描かれた岡嶋二人の物語。
岡嶋二人は両方とも男性なのだけど、
二人の歩みは、まるで恋人のよう。
出会い、共に楽しみ、やがて作家として繁栄、
そしてすれ違い、なんとか一緒にやっていこうと努力するけども、
終わってしまうこの二人の物語は、恋愛小説のよう。

岡嶋二人の、各作品の執筆背景もこと細かく書かれており、
これから岡嶋二人の作品を読む人には、
多少ネタバレになってしまうし、わからない部分も出てくるけど。
このおかしな二人は、単なるエッセイでなくて、
小説として、物語が上手く書かれていて十分に楽しめる。

井上さんにとって今や、架空といってもいい作家岡嶋二人への、
皮肉とも、未練とも、決別ともとれるような本だった。

おかしな二人=岡嶋二人

二人は、この本を読んだだけでも読者には、やっぱりわからない。
きっと、井上さんにもよくわからなかったんだと思う。
だから、おかしな二人というタイトルだったんじゃないだろうか。
友達のようで、恋人のようで、夫婦のようで、戦友だった。
もしかしたら、互いの利益のために共同していただけかもしれないし、
今となっては、岡嶋二人はもういないわけだから、それはわからない。
ただ、いい作品を作っていたというのは本当だと思う。
まだ、岡嶋二人の本を少ししか読んでないけれど、どれも魅力的だったから。

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2010年01月10日

『あゝ、荒野』 寺山修司

あゝ、荒野 (角川文庫) あゝ、荒野


胸が痛くなるような、昭和を感じる2人のボクサーの物語。
寺山修二を僕は知らない世代だけど、人気があったのがわかる気がする。
独特なんだよな、考え方が刹那的というかなんというか。
小説なんだから、その考え方が寺山修司という人間を表してるか
さだかではないけれども、まっとうでない何かを感じる。
我ながら、ずいぶんと曖昧な感想だけども。
現代ではなかなかお目にかかれない、ぎりぎりの感性。

物語は60年代新宿。
もう、一種の時代小説みたいだ。時代の独特の匂いが文体から湧きたつよう。
今にも残るものはあるのだろうけど、
全てが、遠い昔の物語のように感じてしまう。
はなやかとは無縁の泥臭く熱くて、
生の鼓動と死の匂いが強い。ぎりぎりの物語。とても強い物語。
読み解くというより、感じる小説のように感じた。
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2010年01月09日

『宵山万華鏡』森見登美彦 

宵山万華鏡 宵山万華鏡


非常に不思議な物語集。
色々な謎が解けたような解けないような不思議で面白い話だった。
京都の祇園祭を様々な視点で描く万華鏡を覗くような話。
馬鹿馬鹿しさと恐ろしさと面白さが混じり合う怪奇譚で、
森見さんの今までの作品をぶち込んで、かき混ぜたような作品だった。

お祭りの醍醐味のきらびやかさと、
一歩道を外した場面で見られるおどろおどしさ。
2つが上手く混じり合っていて、祭りの表裏を表しているかのよう。
まさにお祭り騒ぎな物語から、
摩訶不思議な現象がおこる恐ろしい物語まで6つの物語をつなぐ
宵山の祇園祭は、本当に各物語、各登場人物ごとに顔が変わっていく。
それは、本当に万華鏡のようなもので、楽しみ方は多種多様。
この本の中での各物語ごとのリンクする部分や、
森見さんの過去作品とのリンクする部分もあり、
そういうところも楽しめるのが、またうれしい。


posted by kakasi at 21:30 | Comment(0) | TrackBack(1) | 読書 「森見登美彦」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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