2008年10月21日

『モダンタイムス』 伊坂幸太郎

モダンタイムス (Morning NOVELS)  モダンタイムス

最近金欠なので、宮部みゆきの新作か、この本を買うかで迷いに迷った。

勇気はあるか?

開いた最初のページで飛び込んできた一文。
僕の場合は勇気を実家に忘れてきたわけでない。
ここだけの話、僕の名前もユウキだ。
勇気なんてそこかしこで使われる題材なので目新しくもない。
でも、僕にとってユウキとは一生向き合い対決していくものなので、
もういっちょうユウキの物語と対決してみるかという気分で購入。
ちなみに、押し絵のついた版が売っていることは、
この本の最後の後書きで知った。
ああ…『ボーイズ・オン・ザ・ラン』好きなのに……

モーニングでの伊坂小説連載は知っていたけど、読んでなかったし、
最近、ダ・ヴィンチなどの本の雑誌も読んでないので、
内容はまったくしらなかっただけによけいに楽しめた。
読んでいて、おやっと思う一文が出てくる。
安藤潤也、犬養という名前が出てくると、
ああ…魔王の続編だったんだと嬉しい気分になった。
これまで、伊坂作品がいくつかリンクしているのはよくあったけど、
ここまで純粋に続編と言えるものはなかった。
魔王、呼吸、そしてモダンタイムという、
大きな力に立ち向かう三部作といったところなのかな。
終わり方を見るともう一作入れて四部作でもいいかなと思える。
対決していくなら。でも見てみぬふりも勇気なのか。
そうだとしたらこれでおしまいでも納得。

『チルドレン』でだったと思うけど、
パンクロックとは立ち向かうことだという言葉があった気がする。
このモダンタイムスの主人公は逃げ回ってばかりだったけど、
最後の最後には対決していく。
世の中の流れに立ちむかおうとしていく。
いや、ただ小さな目的のために立ち向かったのかもしれない。
モーニングという漫画雑誌に載っていただけに、漫画的な展開だ。
これまでも漫画的な部分は多かったけど、この作品は実に漫画的。
覚悟はできているか?勇気はあるか?考えろ考えるんだ……
色んな言葉が頭に浮かんでくる。時に情景が溢れてくる。
僕には、物語のクライマックともいえるシーンで、
見たこともないはずの安藤兄が見えた気がした。

これまでの伊坂作品のように複線による、
大掛かりなどんでん返しがあったわけでもないけど、
小粋な複線による、展開がなんとも言えない。
そして最後の複線となる最初に出てきた
勇気はあるか?
結局主人公の妻のことはわかりにくかったけど
こういうケースもいいじゃないかと思えた。
主人公の答えは「勇気は彼女が」
その続きを聞くと、僕もにやにやしてしまう。


関連作品感想リンク
『魔王』 
『チルドレン』
posted by kakasi at 16:21 | Comment(2) | TrackBack(1) | 読書 「伊坂幸太郎」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月13日

『ゴールデンスランバー』 伊坂幸太郎

ゴールデンスランバーゴールデンスランバー

首相暗殺という言葉が出ていて、
正直、またかと思った。
『魔王』のようなのがまたかなと。
『魔王』はかなり好きな話なのだけど、
また政治がらみなおは勘弁だと思った。
それに首相暗殺では、ケネディ暗殺関連の方が
ミステリアスだと思い、わざわざ創作を読むべきなのか迷った。
そのせいで、発売後もなかなか手が出なかったけど、
やっぱり、伊坂さんの作品にはいい意味で裏切られてきたので、
買って読んでみることに。

話は、首相殺害したとされる男の逃亡劇。
伊坂版の「逃亡者」と呼べるような話になっていた。
相変わらずの洒落た会話と、思わず顔がほころぶ多くの複線。
いつものようなミステリと同じように感じるけど、
ミステリ要素より、圧倒的にエンターテイメントが溢れている。
伊坂幸太郎が娯楽小説に徹したらという謳い文句は、本物だった。

本当に、一言で逃亡劇の話なんだけど、
その映画じゃないわけで、派手なアクションシーンはない。
じゃあ、何が見所だというと、
人間模様であったり、巨大な権力の動き等になる。

人間の最大の武器は、との問いに

「習慣と信頼だ」

と応える人がいれば、

「思い切りだよ」

と応える人もいる。
他にも、冷静な行動であったりとあると思う。
そしてそれが、最大の欠点にも変わる。
とても、辛くて悲しいことで、
最終的には、逃げるための知恵こそが武器なのかもしれないと感じた。
そんな悲しい話なのだけど、ラストの章で、
だいぶ救われた気がした。
「たいへんよくできました」そう言いたくなるくらいに。

posted by kakasi at 19:30 | Comment(2) | TrackBack(1) | 読書 「伊坂幸太郎」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月10日

『フィッシュストーリー』 伊坂幸太郎

フィッシュストーリー フィッシュストーリー

もう一週間以上前だけど、
いつものように本屋のバイトで、新刊入りの箱を開けていたら
中から出てきたのは伊坂幸太郎の新作。
これは、うれしかった。
バイトで好きなものに触れられる。
いつもの単調な仕事が、一気に新鮮さを増す。

今回は、めずらしく短編集だった。
そういえば、『チルドレン』では
短編集のふりをした長編小説です。
と、言っていたが、今回は短編小説だった。
まぎれもなく。
しかし、著者得意の今までの作品が何かしらリンクしている
というところは、健在だった。
著作一覧を見ると、いつの間にか13作のタイトルがずらりと。
ああ、ここまで書いてきたんだなと
他人事ながら誇らしく、そして頼もしく。
もはや、伊坂作品にはずれなし。
そう思えるほど、これまでの作品は好きで
今回の話もとても安心して、楽しく読めた。

「動物園のエンジン」
「サクリファイス」
「フィッシュストーリー」
「ポテチ」

4つの短編からなる今作品。
短編だからか、今まで感じていた
すさまじいまでの、すがすがしい満足感は得なかったけど
どれも、安定しておもしろく
上手く考えたなって感じられる物語だった。
特に、フィッシュストーリーは中でも特に好きで
一つの物語が、どこか別の誰かの物語に影響しているという
伊坂作品の真骨頂を見た気分になった。
音楽も文学も、たった一つの作品が
世界にまで及ぼすような影響を与えることがある。
そして繋がっていき、紡がれていく。
僕の孤独が魚だとしたら……
次は何を物語るのだろう?
早くも、次の巻が待ち遠しくてたまらない。
posted by kakasi at 19:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 「伊坂幸太郎」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月20日

『陽気なギャングの日常と襲撃』 伊坂幸太郎

陽気なギャングの日常と襲撃 陽気なギャングの日常と襲撃
知的で小粋で贅沢なギャングワールド増殖中
この本の前作、『陽気なギャングが地球を回す』は、
映画となって、ただいま絶賛上映中。
4人のギャングが、あーだ、こーだ言いながら
やっぱり事件に巻き込まれていく。
相変わらず、ロマンを探しているようだ。

読んでて、こういう話だったよな〜と前作を思い出す。
今回は、前作以上に響野が道化を演じていて笑える。
会話でも、行動でも、彼の行動は、一味も二味も違う。
道化師は、笑わせてくれなくちゃ。

そして、映画を見たからか、読みながら
映画の俳優陣がスムーズに、頭の中でイメージされる。
だから、自分でこんな感じなんだろうなと、
イメージしながら読むのが、とても楽しかった。
もちろん話事体も、おもしろい。
もう、この人が小説を書くなら、
つまらないことでも何かに繋がっていると思った方がいいかもしれない。
会話も絶品です。
カッコイイ言葉もいいけど、笑える言葉もいい感じだった

今作はもちろん、そのまま読んでもおもしろい。
でも、やっぱり前作も読んだ方が、ずっとおもしろいと思う。
映画だけ見たという人も、
「地球を回す」の小説版を読んでから挑むべき作品。
もちろん、今作から入っても、おもしろいと思いますが。

熱くもないし、冷めているわけでもない。
こういう、ぬるめの感覚がとても好き。
posted by kakasi at 11:35 | Comment(2) | TrackBack(6) | 読書 「伊坂幸太郎」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月11日

『終末のフール』 伊坂幸太郎

終末のフール 終末のフール
世界が終わる前の、叫びとため息。8つの物語。

群像劇が好きです。
Aの行動でBの行動が決まってしまったり、
Cがそのとばっちりの影響を受けたり。
8つの短編は、そこまでの影響を受けあうものでないけれど、
確実にそれぞれの人物が影響を受けあっているものがある。
「生きる」
前向きな人物も、臆病な人物も、絶望に打ちひしがれた人物も。

8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡すると発表された5年後。
仙台のあるマンションに住む人々の8つの生き方。
世界滅亡といえば、ありふれたテーマ。
そんなありふれたテーマだけど、一番人間の本質が見えるテーマだと思う。
明日世界が滅びるとしても 今日、君はりんごの木を植える

開高 健という人は、この言葉を好んで使った。
マルティン・ルターという人の言葉だ。
もっともルターは、「君」でなく「私」としたらしいけど。
とにかく、そういうことだ。
この物語は、そういう話なんだと思う。
ただ、その一言で済ましてしまうなら世にありふれてしまっている。
だから、小説っておもしろくて奥が深い。 

『ダ・ヴインチ』で伊坂さんは、
世界が終わるとしても小説を書くでしょうね
と語っていた。
僕も世界が終わるとしても、おもしろい本を読みたいものだ。
冬眠のガールの美智ほど読もうとは、思わないけど。
絶望ってものは、自分に何も生まないと思う。
じたばたして、足掻いて、もがいて。
生き残るってそういうのだよ、きっとさ

『終末のフール』のラストにこんなセリフが、あった。
本当の意味で強い人たちは、そうやって生きていくのかもしれない。
あの空が落ちてくるその日まで。
posted by kakasi at 23:49 | Comment(4) | TrackBack(7) | 読書 「伊坂幸太郎」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月17日

『砂漠』 伊坂幸太郎

砂漠  砂漠

ちょうど伊坂作品と出会って2年。
今大学2年だけど、高校生のときに立ち寄った馴染みの本屋で、
めったに小説を買わない、読まない僕が、
オーデュボンの名に惹かれ、すっかり本大好き。
司書の資格のコースまで取ってしまうほど(他にも理由があるけど割愛)
魅了させた伊坂幸太郎、『魔王』から間もなく登場!
最新書き下ろし『砂漠』待ってました!!
相変わらずテンポのいい会話。
今回は、クラッシュ、ラモーンズを持ってきて興味をそそる。
たいしてラモーンズとか好きじゃないけどね。

ただ、今までの作品は良い意味で驚きがあり、衝撃が走ったけど
今回は、それがイマイチだった。
でも、最後の「セドッリク!」までの流れと複線には、鳥肌が立った。
小説としては、おもしろいけど、伊坂幸太郎という名前のせいかな?
音楽の世界で言えば、セカンドアルバム以降のオアシスみたいな。
期待がでかいだけに、良いモノでも傑作じゃないと,
満足できないみたいな気分。

それでも、引き込まれるように読みましたけどね。
砂漠に雪が降るような衝撃は、なかったけど、
まるで伊坂さんの自伝的とも思えるような、学生生活を描いた青春小説。
僕も大学生だけど、ほんとあっという間だよ。もう2年経つよ。
あ、とりあえず、西嶋の高校の時にお世話になったという家裁調査官は、
『チルドレン』に出てきた陣内さんだと予想。もしくは武藤。
されに言えば、陣内さんに殴られた少年が西嶋かと、
まあ、それはさすがに無いか。

伊坂さんが盛んに語る
「パンクロックってのは、立ち向かうことなんだ」

立ち向かうってことは、以外と大変。
上手くかわして生きるほうがよっぽど楽。
それでも不器用なくらい、立ち向かっていく姿は、かっこいいんだよね。
果たして彼らは、砂漠に立ち向かい雪を降らせるほどに、
彼らの世界を潤すことができるのだろうか。
「人間にとって最大の贅沢とは、
人間関係における贅沢のことである」

その通りだね。ああ〜ほんと大学生活なんてあっという間だ。
もちろん中、高生のもね。
後悔はするだろうけど、精一杯生きよう!
それが、青春かもしれない。

posted by kakasi at 11:13 | Comment(2) | TrackBack(8) | 読書 「伊坂幸太郎」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月23日

『魔王』 伊坂幸太郎

魔王  魔王


思わず戦慄が走る。
伊坂幸太郎は、変化した。いや、進化したと言うべきか。
より文学的になった最新作。
でも、やっぱり伊坂節は、健在。
この人の強みは、やはり会話だ。
そして何より、おもしろい。

この本は「魔王」と「呼吸」の2編に別れている。
2つは、繋がっていて「呼吸」は「魔王」の5年後の作品。
『重力ピエロ』を思い起こすような、兄弟の物語であり、
世の中に問うような、かなり現在の社会事情に
かなり影響を受けたような物語。

あと、物話的には「魔王」の方が好き。
僕も兄弟がいて長男ということもあるし、
やっぱり、この兄貴のかっこよさは、ただ事ではない。
「考えろ、考えろマグガイバー」
何でこんな、この話を好きになったのか、なんでこの兄貴が好きなのか。
それは、やはりアノ言葉
でたらめでもいいから、自分の考えを信じて、対決していけば
そうすりゃ、世界は変わる。

青臭いし、どこかで聞き覚えがあるんだけど、
やっぱりこういう言葉が好き。
人々の心をわしづかみにする若い政治家が、
日本に選択を迫る時、
長い考察の果てに、兄は答えを導き出し、
弟の直感と呼応する。
この先にあるのは、青空なのか、荒野なのか。
なにやら続編も匂わせるような、
でもやっぱりここで終わりなような、終焉。

作者が言いたかったのは「考えろ、考えろ」ということなんだろうか。
情報に惑わされず、自分で考えるんだ。
そうすれば、世界は変わるかもしれない。たぶん。
posted by kakasi at 23:48 | Comment(0) | TrackBack(3) | 読書 「伊坂幸太郎」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月12日

『死神の精度』 伊坂幸太郎

死神の精度 死神の精度


死神の視点を通して語られる生と死の重さ、もしくは軽さ。
定義があるようで、なく、ないようで、ある。
あいかわらずよくわからないが、そこが魅力なのかもしれない。
曖昧なところが。
斬魄刀もデスノートも持ってない、死神が主人公の短編6作。
誤りと嘘に大した違いはない
微妙な嘘は、ほとんど誤りに近い

いちおう推理物なので、嘘をつくやつは、出てくる。
誤りを語る人物もいる、それは大した違いがない。
結局、真実ではないから。
でも人間は、そんなもんだよね。嘘もつくし、誤ることもある。

今回も、伊坂作品の特徴である、
以前出したキャラをなんらかの形で使う技法がとられた。
そこが、もう僕はうれしくて、うれしくて。
『死神対老女』は、このおかげで、ラストをすばらしくを締めれたと思う。

死神の大好きなミュージック。
個人的にストーンズの「ロックス・オフ」が出されたのがうれしい。
この曲すごい好きなの、僕も。

それと、人間の普通がよくわかってない死神の、
ちょっとしたことへの対応がおもしろい。
この辺も、死神が憎めない理由かな。
基本的に仕事を真面目にやっているのだが、
どこか適当そうであり、ちょっとズレてる。
そんな死神の6つの物語を、読んで見てはいかが?
そして、そろそろこの作者の書き下ろし作品が読みたい。
posted by kakasi at 21:17 | Comment(1) | TrackBack(13) | 読書 「伊坂幸太郎」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする