2006年03月01日

『海辺のカフカ』 村上春樹

海辺のカフカ (上) 海辺のカフカ (下) 海辺のカフカ (上)(下)

15歳の少年は、そこから逃れるために冒険に出た。
あるいは、何かをなし得るために。

一人の老人も冒険に出る。
失ってしまった何かを、自分の半身を、自らの影を求めて。

この本が出た頃、僕は16歳だった。
その頃村上春樹などまったく興味がなかった。
そしてこの本を読んだ今、僕は20歳になった。
僕は15歳の頃、タフな人間などではなかったし、
特別変化したとも思わない。

15歳の頃の転機といえば、故郷の町や、仲の良い友人達から離れ
隣町の高校に進学したということくらいだ。
でも、それは環境の変化で、人間としての変化としては、
どちらかといえば、20歳になって少し変わってきたと思う。
転換の年は、15歳の次に20歳くらいがしっくりくる気がする。

そういえば、この本と似た話で同作者の
世界の終わりとハードボイルドワンダーランドがある。
その本が出た年は、僕が生まれた年だった。
変化といえば、最近フランツ・カフカの変身を読んだばかりだった。
こう、考えるとそこに何か意味があるんじゃないかと思うが、
実際、そんなことはない。
同年代の人ならば、大体がそんなものかもしれない。
でも、色んなことが繋がって、その関連に意味があるかもしれない。
必然性ではない、単なる偶然だけど、関係性が持たれる可能性はある。
そしてそこから、何かしらの意味が生まれるかもしれない。

どうやら文章が破綻してきてしまったみたい。
ホントに書きたいことは、他のことでいっぱいあったんだけど
何故かこんな文章になってしまった。
世界はメタファーだ、カフカ君。

でもね、僕にとっても君にとっても、
この図書館だけはなんのメタファーでもない。
この図書館はどこまでいっても―――この図書館だ。
僕と君とのあいだで、それだけははっきりしておきたい。

僕にとって、この本がメタファーではなく
『海辺のカフカ』以外の何でもないものであったら、
それは幸せなことかもしれない。
別に15歳の象徴でなくても、図書館のことでも、変身のことでもなく
『海辺のカフカ』としてだけあれば、それでいい。
僕の物語に拳銃が出てきたからといって、
それは発射されなくは、ならないことなんてまったくない。
そこにあるだけでいい。なにか関係があるかもしれないくらいでいい。
この本も、そんな曖昧模糊で不思議なくらいでいい。
そんな気がしている。
絵を眺めるんだ、風の音を聞くんだ。
海を見るといい、空を見上げるといい、自分をみつめるといい。
海辺のカフカを思うといい。
僕には、それができる。
posted by kakasi at 11:44 | Comment(0) | TrackBack(2) | 読書 作家別 「ま行」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月24日

『三谷幸喜のありふれた生活3 大河な日日 』 三谷幸喜

三谷幸喜のありふれた生活3  大河な日日三谷幸喜のありふれた生活3 大河な日日

三谷幸喜という人間かを、知るためのてっとりばやい手段は、
これを読むことだと思う。
私的なエッセイなので、文章も砕けた感じで、とても読みやすい。

「大河な日日」とあるだけに、内容は「新撰組!」の始まる前から、
始まって少し経ったあたりまで。
新撰組のネタも多いけど、本当に私的なことも多い。
ありふれた日常とあるけど、やっぱり一般人の僕らからすると、
とてもじゃないが、ありふれてねえよ!
と突っ込みたくなるようなことも多い。

三谷さんが、どれだけ香取慎吾を買っているか。
脚本家としての喜びや苦悩。
そして自分という人間は、こんなやつと、
人々に知ってもらうような内容が満載。

個人的には、三谷さんが、漫画家の浦沢直樹をベタ褒めしてるのが好き。
僕も、この人の漫画が好きだし、『20世紀少年』は、すごい作品だと思う。
「物語る力」というものは、とても大事。
小説でも、映画でも、結局はこれが重要。
映像で、ごまかしたりじゃなく、内容、展開、構成。
エンターテイメントとしての面白さ。
そして、それは浦沢さんだけでなく、三谷さんも持っていると思う。
僕からしてみれば、そんな嫉妬ばかりしなくても、
三谷さんも十分すぎるほど、すごいと言ってやりたい。
結局、人は過小評価するものなんでしょうか。
まあ、それも三谷さんの魅力とも言えるかも知れないけど。
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2005年09月03日

『水木しげるの妖怪談義』 水木しげる

水木しげるの妖怪談義 水木しげるの妖怪談義


京極夏彦、小松和彦、荒俣宏、養老孟司、
吉村作治、美輪明宏、南伸坊、呉智英
と、豪華な面々と水木しげるの対談。もちろん内容は妖怪。
でも、妖怪を語ると、人間が見えてくるという不思議な内容。
妖怪を通して、人の本質のようなものまで語っている。
もちろん妖怪に関してもすごいいっぱい語るけどね。
妖怪にとりつかれた人々の対談。
対談中によくみんな言ってたけど、
水木さんは、もう妖怪なようなものだと言っている。
そう言われると、なんとなくそうかもって思える。


京極夏彦―妖怪画家は努力をしない?
小松和彦―日本人の暮らしのなかに棲む妖怪
荒俣宏―世界のミステリー遺跡に残る妖怪の痕跡
養老孟司―妖怪は実在するのか?それとも脳の錯覚か?
吉村作治―エジプトの死生観と妖怪
美輪明宏―妖怪とあの世 人は死んだらどこへ行くのか?
南伸坊・呉智英―水木しげる妖怪探訪の旅


これが目次。
妖怪の話は、少なかったけど美輪さんとの対談は、
なかなかに興味深かった。
妖怪の大切さ、その環境の大切さというものも
誰との対談かは、忘れたが(読んだの先月)それも興味深かった。
東京のような都市じゃ確かに、妖怪なんて出てこれなそう……
現代は、妖怪にとって住みにくい世界なんだと実感。

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2005年08月30日

『羊をめぐる冒険、上・下』村上春樹

羊をめぐる冒険〈上〉 羊をめぐる冒険〈下〉


村上春樹の青春三部作の3作目。
というのは、読み終えてから知りました。
先に『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』を読むべきだったんだ…
ちなみに、この作者の本は、『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド
しか読んだことありません。
でもその本は、かなり好きな部類なので、期待して読みました。


でも、普通に楽しめた。
前作を読まなくても支障は、なし。
ただ、主人公は一貫してるようなので心情などを知りうるためには、
読んだ方がいいみたい。
あと、友達の鼠を知るためにも。
彼はこの物語でキーパーソンだけど、
彼については、詳しく語られてないから。

タイトル通り、羊をめぐる冒険。
羊を探す経過は、推理物のようでファンタジーの冒険のようにも感じた。
でも、ジャンルとしては純文学が一番似合うと思えるから不思議だ。
村上春樹という作家の哲学、
というより村上春樹の世界とでも言った方がいいかもしれない。
この世界は、多くの悲しみと虚無と孤独、
そして大人のスタイルで満ちている。
僕のラストの喪失が何を意味するのか、
とか他の話ではそこまで思わないことを考えてしまう。
将来、教科書の題材とかにこの作家の小説が載りそうだ。
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2005年07月26日

私の中の龍よ

『龍は眠る』 宮部みゆき


龍は眠る 龍は眠る


宮部みゆきさんの作品って、ファンタジーが入ってたり、
推理物だけど事件の解説、謎解きより、
続きを知りたいと思う気持ちのほうが強い。
物語を楽しめる作品が多いから好きだといっても
まだ、数冊しか読んでないけど。
それに、本格推理はちょっと苦手なんです。



この本は、いわゆるサイキック、超能力もの。
サイキッカーと思われる2人の少年と、雑誌記者の大人がメイン。
やんわり、ラブストーリーも含まれている。


自分の内に秘めた力(超能力)による苦悩。
その力ゆえ知ってしまう、不幸な事件。
さらに、新たな事件が主人公である雑誌記者を襲う。


人の心の内に眠るものが、表へと出る時、
起こるのは憤怒、憎しみ、妬み…

誰の心にも龍は眠っている。その龍の種類は多種多様。
だから彼らは、苦しむのか?
だから彼らは、絶望するのか?
私の内なる龍が、どうか私をお守りくださいますように

でも、善といえるものも存在する。
世の中、そう捨てたものでもないかもしれない。
その龍が、どうか苦しまなくてすむものでありますように。



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2005年06月14日

「文体とパスの精度」村上龍、中田英寿

文体とパスの精度 文体とパスの精度


以前、『悪魔のパス 天使のゴール』を読んで、
村上さんは、サッカー好きなんだなと感じましたが、
これを読むと、やっぱり、サッカー好きだなと感じた。
サッカーを見るところも、おもしろいな〜と感じる。
人によっては、なんだ文句ばかりいいやがって、この親父が!
とか思う人もいるだろうが、サッカー見てる人なんて、みんなそんなもの。
経験者じゃなければ、なおさら。

みんな好きだから、文句言うし、褒めるとこは、褒める。
あーだ、こーだ、ネットの普及で、
色んな人達の言いたいことが、言えるし聞ける。
この本でも、ネットの普及は、良いことだと、
中田英寿、村上龍の対談で語られているが、
有名な人達は、特にそう感じるんでしょうね。
マスコミという媒体を通らないから。
メディアだけを媒体にするなら、
ほぼ自分の言葉を、大勢に伝えられるから。


それと、2人の人間性がよくわかる。特に中田の。
村上さんが、中田という人間を、わかりやすく僕らに導いた感がある。
僕は、あんまり中田のホームページ見ていなかったから、
どうしても、マスメディアが作り上げる、イメージがあった。
強く、孤高で、サッカーに対してストイックで、頭が良く、近寄りがたい。
対談で、特に印象的だったのが、
中田は、自分の心の中のコアのようなところは、
傷つきやすいと言っていること。
「弱い」と言ったほうが、正しいとさえも言っている。
でも、それを補うために、色んなものを身に着けて、
武装しているという話もしていた。
自分を守るためには、自分で工夫しろと語っていた。
自分のことは、自分でやれ、自分で考えるんだ、自分が守るんだ。
中田の哲学のようなものを感じた。


あと、2人の年齢はけっこう離れてるんだけど、
2人のメールの内容、対談を見ると、
ほんとに仲の良い友達なんだと感じる。
2人とも、言いたいことを言ってるし、いい意味で遠慮がない。
それに、2人は頭が良い、回転が速いと言うべきなのか。
そう考えるか〜とか、そう答えるのかと関心する。
あと、村上さんは、作家だけあり、話の内容が丁寧でわかりやすい。
特に対談の部分が。表現とか、すごいおもしろい。
さすがだな〜と思う。
これが文体の精度と言うべきものでしょうか?


雑誌に載るような、内容のものだけど、
こういう本も、おもしろいものでした。
2人の繰りなす、会話というパスの精度は、非常に高く、
サッカー興味ないよって人も読んでみて損は無いと思います。
メールの部分は、サッカーのことだらけなので、
読んでもつまらないかもしれないけど……
そこは、サッカーファンが喜べばいいでしょう。



posted by kakasi at 22:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 作家別 「ま行」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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