2007年11月13日

『模倣犯 (上・下)』 宮部みゆき

模倣犯〈上〉 模倣犯〈下〉

じっくりと、腰を据えて書いたんだろうなと想像できる。
一つ一つの描写を丁寧に、そして人物の深層心理を徹底的に。
その分、人物に感情移入しやすかった。
そして、そのせいで多くの人々の、悲しすぎる結末に、
生々しすぎるほどの、悲しみと空虚感を感じた。
事件が起こっていく、上巻でのスリリングさは、すごいものだった。

宮部さんの描く人物は、本質的に優しい人が多い。
それだけに、そういった人物が堕ちていく、あるいは殺されていく。
そんな光景が、見ていられない、目を背けたくなる。
どこかで、救いがあるはずだと思っていると読み進める。
僕は『模倣犯』をそうやって読み進めていった。

物語の中とはいえ、真犯人の薄っぺらさを考えると、
殺されていった人が不憫でたまらなくなる。
ここまでしなくていいだろうと思い、胸がしめつけられる。
でも、現実にもそういう事件があることが悲しい。
もはや事件は、他人事ではない。
でも、そういうことを知っても、
やはり残酷な事件は、自分の身の周りに起こらない限り
他人事の、対岸の火事でしか思えない。
それが、過激なマスコミや、楽観的な一般大衆に繋がるんだろうか。

あと、タイトルの『模倣犯』
こういうことだとは、考えもしなかった。
最後まで、結末も予想さえさせなかった。
ある意味、あっさりなのだが、
読んでいて、真犯人の真意がなかなか見えてこないだけに、
多くの人物が、さまざまな考えを抱えていただけに、
本当に、それだけかと思っていたので、
こんな結末とはと、納得のような納得できないような。
でも、傑作といって間違えない作品だと思う。
posted by kakasi at 11:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 作家別 「ま行」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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